むかしがたり

日本の昔話を代表する名作のひとつ「鶴の恩返し」

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鶴の恩返し 山形県南陽市

  • どうぶつゆうめいかなしい
  • かんこうスポット

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、織機川(おりはたがわ)のほとりに、金蔵(きんぞう)という男が暮らしていました。

ある日のこと、金蔵が町に出掛けた帰り道。道端で若者が、一羽の鶴を捕まえていじめていました。
「あまりにかわいそうなことをするじゃないか…」
そう思った金蔵は、若者を呼び止めてその鶴をお金で買いました。若者が立ち去ると、金蔵は鶴を縛っていた縄をほどいてやります。
「ほら、家へお帰り」
鶴は喜んだしぐさを見せて、空へ羽ばたいて行きました。

その夜、金蔵が家で夕食を食べていると、表の戸を叩く音がしました。
「おや、こんな時間に誰だろう」
戸を開けてみれば、そこには金蔵がこれまで見たこともないほどの美しい若い女が立っていました。

しかも女は、金蔵の嫁にしてくれといきなり頼み始めたのです。
金蔵はびっくり。こんな美人に突然結婚を申し込まれて、物凄くどぎまぎしてしまいます。
金蔵は何度も断りましたが、女はてこでも動こうとしません。どうしても嫁にしてくれと言って聞かないのです。

弱ってしまった金蔵は、仕方なく女を家に招き入れました。女は喜んで家の中に入り、すぐさませっせと働き始めました。

女は炊事も洗濯も上手で、気立ても良く、贅沢をせず、文句も言わない、非常によくできた嫁になりました。金蔵もまた、降って湧いた幸運に喜びました。
特に女は機織りが得意なようで、女が織った反物を町に持って行くと、とても高く売れました。

絹織物

またしばらくしたある日。
女がかしこまった顔で金蔵に言いました。
「今から七日の間、私は隣の部屋で繕い物をします。その間、決して覗かないでください」

「七日も部屋にこもって働かなくてもよかろうに」
金蔵は女の身体を気遣ってこう言いましたが、 女は大丈夫だと繰り返すばかり。
一度言い出したら聞かない性格だから、もう何を言っても駄目だろうと諦めた金蔵は、七日間の部屋ごもりを許しました。

女は早速隣の部屋へ行き、戸をしっかりと閉めてしまいました。
機織りを始めたのでしょう。カッタンコットン…昼も夜も機を織る音がします。

ご飯も食べず、夜も寝ずに、カッタンコットンと機を織っているものですから、金蔵はだんだん心配になってきました。
そしてとうとう七日目になりました。

金蔵はもう我慢できなくなりました。覗くなと固く言われたのにもかかわらず、戸をそっと開けて中を覗いてしまいます。
「ちょっと様子を見るだけだから…」

するとどうでしょう。部屋の中で機織りをしているのは、女ではありませんでした。痩せた鶴が自分の羽を一枚むしっては織り込み、むしっては織り込み…自分の身体を犠牲にして美しい織物を織っていたのです。

あまりの光景に金蔵はびっくりして、「あっ!」と声を上げてしまいました。
時すでに遅し。
金蔵の視線に気づいた鶴は、
「あれほど覗かないでくださいとお願いしましたのに…
そう、私はあなたに助けられたあの鶴です。正体を知られてしまったからには、もうここには居られません」
と泣きながら答えました。

鶴は今しがたまで織っていた織物を、形見として金蔵に手渡しました。そして再び高い声で鳴きながら飛び立ち、空高くに消えて行ったのでした。

むかしむかし、織機川(おりはたがわ)のほとりに、きんぞうという男が くらしていました。

ある日のこと、きんぞうが 町に出かけたかえり道。道ばたで わかものが、一わのツルをつかまえて いじめていました。
「あまりに かわいそうなことを するじゃないか…」
そう思った きんぞうは、わかものを よびとめて そのツルを お金で かいました。わかものが 立ちさると、きんぞうは ツルをしばっていた なわを ほどいてやります。
「ほら、家へおかえり」
ツルは よろこんだ しぐさを見せて、空へ はばたいて行きました。

そのよる、きんぞうが 家でゆうしょくを 食べていると、表の戸を たたく音がしました。
「おや、こんな時間に だれだろう」
戸をあけてみれば、そこには きんぞうが これまで見たこともないほどの うつくしいわかい女が 立っていました。

しかも女は、きんぞうの よめにしてくれと いきなり たのみはじめたのです。
きんぞうはびっくり。こんなびじんに とつぜん けっこんを もうしこまれて、ものすごく どぎまぎしてしまいます。
きんぞうは 何ども ことわりましたが、女は てこでも うごこうとしません。どうしても よめにしてくれと言って 聞かないのです。

よわってしまった きんぞうは、しかたなく女を 家に まねき入れました。女はよろこんで 家の中に入り、すぐさま せっせと はたらきはじめました。

女はすいじも せんたくも じょうずで、気立てもよく、ぜいたくをせず、もんくも言わない、ひじょうに よくできた よめになりました。きんぞうもまた、ふってわいた こううんに よろこびました。
とくに 女ははたおりが とくいなようで、女がおった たんものを 町にもって行くと、とても高く うれました。

絹織物

またしばらくした ある日。
女が かしこまったかおで きんぞうに 言いました。
「今から 七日のあいだ、わたしは となりのへやで つくろいものを します。そのあいだ、けっして のぞかないでください」

「七日も へやにこもって はたらかなくても よかろうに」
きんぞうは 女のからだを 気づかって こう言いましたが、 女は だいじょうぶだと くりかえすばかり。
一ど言い出したら 聞かない せいかくだから、もう何を言っても だめだろうと あきらめた きんぞうは、七日かんの へやごもりを ゆるしました。

女は さっそく となりのへやへ行き、戸をしっかりと しめてしまいました。
はたおりを はじめたのでしょう。カッタンコットン…ひるも よるも はたをおる音がします。

ごはんも食べず、よるもねずに、カッタンコットンと はたをおっている ものですから、きんぞうは だんだん しんぱいになってきました。
そしてとうとう 七日目になりました。

きんぞうは もう がまんできなくなりました。のぞくなと かたく言われたのにも かかわらず、戸を そっとあけて 中をのぞいてしまいます。
「ちょっと ようすを 見るだけだから…」

するとどうでしょう。へやの中で はたおりを しているのは、女では ありませんでした。やせたツルが 自分のはねを 一まい むしっては おりこみ、むしっては おりこみ…自分のからだを ぎせいにして うつくしい おりものを おっていたのです。

あまりのこうけいに きんぞうは びっくりして、「あっ!」と こえを 上げてしまいました。
時すでに おそし。
きんぞうの しせんに 気づいたツルは、
「あれほど のぞかないでください とおねがいしましたのに…
そう、わたしは あなたに たすけられた あのツルです。しょうたいを 知られてしまったからには、もうここには いられません」
となきながら こたえました。

ツルは 今しがたまで おっていた おりものを、かたみとして きんぞうに 手わたしました。そしてふたたび 高い声で なきながら とび立ち、空高くに きえて行ったのでした。

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 鶴布山珍蔵寺

鶴布山珍蔵寺

金蔵が仏門に帰依したのが寺の開基と伝えられ、鶴の毛織物が寺の宝にされていたという言い伝えが残されています。また寺の梵鐘にも鶴の恩返しが浮き彫りにされています


よみ かくふざんちんぞうじ
住所 山形県南陽市漆山1747-1
電話 0238-47-2264
時間
定休 なし
料金 無料
その他  

画像引用:夕鶴の里様(http://nansupo.ddo.jp/nanyo-cl/yuduru/temple.html)