【山形県】およしのたたり

およしのたたり 山形県庄内地方
ちょっとこわい

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、厄介な問題を抱える村がありました。毎年12月の丑の日になると、必ず村のどこかの家から火が出て、家を燃やし尽くしてしまっていたのです。
毎年毎年同じことが続くので、村人たちは12月が近づくと心が塞がれる気持ちでした。

「また火が出るんじゃろうなあ」
「今年はどの家が焼けるんじゃろ」
村人は顔を合わせるとこの話ばかり。
「しかし、こう毎年だと、やっぱり何か理由がありそうだけんど」
「山の神さんがお怒りになっているのかもしれん」
「そうかもしれんの。山の神さんの祟りじゃろて」
「おお、おそろしい、おそろしい」

山の神の祟りだとしても、村人だけで話し合ったところで、上手い解決策など出てきません。
そこで、村人たちは長者に相談に出かけました。

話を聞いた長者は、腕組みして首を捻り、うーんと唸って、こう言い切りました。
「んだ。確かにこれは山の神さんの祟りに違いねえ。祟りを鎮めるには、娘っコの生贄を差し出さねばなんねえ」

村人は
「やはり、そうじゃったか」
と頷き合うと、早速村の外れにある、およしの家へ向かいました。

およしは村一番の貧しい家の娘で、父親と二人で暮らしていました。
村人たちはおよしを上手く言い含めて外へ連れ出し、山へ運びます。そして山の神が棲むと伝わる大木に、およしを縄で縛りつけてしまいました。

大木

「およしや、お前に恨みは何もないが、これも村のためじゃ」
そう言い捨てると村人たちは、木に縛り付けられたおよしをそのままにして、山を下りて村に帰って行ってしまったのです。

数日経って、丑の日になりました。
それまでは何事もおきませんでしたが、夕方になるとどこからか突然、強い風が巻き起こりました。
その大風で家の竈(かまど)の火が燃え移って、あっという間に村中に燃え広がりました。村の全ての家が焼き尽くされ、長者の家も灰になりました。長者もまた焼け死んでしまったのでした。

けれどもなぜか、およしの家だけが全く燃えなかったそうです。不思議なこともあったものです。

むかしむかし、やっかいなもんだいを かかえる村が ありました。毎年12月の うしの日になると、必ず村のどこかの 家から火が出て、家をもやしつくして しまっていたのです。
毎年毎年 同じことが つづくので、村人たちは 12月がちかづくと 心がふさがれる気もちでした。

「また火が 出るんじゃろうなあ」
「今年はどの家が やけるんじゃろ」
村人は かおを合わせると この話ばかり。
「しかし、こう毎年だと、やっぱり何か りゆうがありそうだけんど」
「山のかみさんが おいかりに なっているのかもしれん」
「そうかもしれんの。山のかみさんの たたりじゃろて」
「おお、おそろしい、おそろしい」

山のかみの たたりだとしても、村人だけで 話し合ったところで、うまい かいけつさくなど 出てきません。
そこで、村人たちは ちょうじゃに そうだんに出かけました。

話を聞いたちょうじゃは、うでぐみして くびをひねり、うーんとうなって、こう言いきりました。
「んだ。たしかにこれは 山のかみさんの たたりにちがいねえ。たたりを しずめるには、むすめっコの いけにえを さし出さねばなんねえ」

村人は
「やはり、そうじゃったか」
とうなずき合うと、さっそく 村のはずれにある、およしの家へ 向かいました。

およしは 村いちばんの まずしい家のむすめで、ちちおやと ふたりでくらしていました。
村人たちは およしをうまく言いふくめて 外へつれ出し、山へはこびます。そして山のかみが すむとつたわる大木に、およしを なわでしばりつけて しまいました。

大木

「およしや、おまえに うらみは 何もないが、これも村のためじゃ」
そう言いすてると 村人たちは、木にしばりつけられた およしをそのままにして、山を下りて 村にかえって行ってしまったのです。

数日たって、うしの日に なりました。
それまでは 何ごとも おきませんでしたが、夕方になると どこからかとつぜん、つよいかぜが まきおこりました。
そのおおかぜで 家のかまどの火が もえうつって、あっというまに 村中に もえひろがりました。村のすべての家が やきつくされ、ちょうじゃの家も はいになりました。ちょうじゃもまた やけしんでしまったのでした。

けれどもなぜか、およしの家だけが まったくもえなかったそうです。ふしぎなことも あったものです。


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