【宮城】大蛇の満腹草

大蛇の満腹草 宮城県大河原町
ちょっとこわいどうぶつ

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、宮城県の大河原(おおがわら)の里山に大蛇が住んでいました。人を丸呑みにしてしまうくらい大きなもので、村人たちは大蛇を恐れながらも、たくさん生えている筍や蕨を目当てに里山に入る日々を過ごしていました。

ある日、平五郎(へいごろう)という若者が、やはりキノコを採りに里山をうろうろしていると、沢のほうから悲鳴が聞こえてきました。

「なんだなんだ?」
驚いた平五郎が沢に走ってみれば、藪の向こうで、あの大蛇がぬるぬるとした身体をうねらせて、もぞもぞ動いていました。しかもあろうことか、大蛇の大きな口には見覚えのある村人の身体が。そう、ちょうど大蛇が人を丸呑みするところでした。

あまりの恐ろしさに声も出せず、身動きもできない平五郎。村人が食われるところを、ただただじっと見ているしかありませんでした。

人を食べて満腹になった大蛇のお腹はまんまると肥え、それはもうこの世の生き物とは思えない姿をしています。
ところが、これ以上は何も食べずともしばらく満腹だろうというのに、大蛇はそばにあった草をむしゃむしゃと齧り始めたのです。

「蛇が草を食うんだべか…」
不思議に思いながら眺めていた平五郎でしたが、改めてびっくりすることが起きました。

草

なんと、まんまると膨れていた大蛇のお腹が、しゅるるるると、しぼんでいったのです。
人を丸呑みする前の姿に戻った大蛇は、もうここには用はないと言わんばかりに、大きな身体をくねらせて山の奥に消えていきました。

「あの草はもしや、食べたものをすぐに消化する薬草なのじゃろうか。となれば、これは大発見。たくさん摘んで、町で売れば大儲けできるぞ」
さっきまでの恐ろしい気分は、どこかへ飛んで行ってしまった平五郎。こうしちゃいられないと、摘んだキノコを放り投げて、大蛇が食べていた草をどんどん引き抜きました。

たくさん草を手に入れた平五郎は、ちょうど上手い具合に、今夜、村で大食い大会が開かれることを思い出します。
「この草があれば、大食い大会も楽勝だべ」
にやにやほくそ笑んだ平五郎は、もう勝った気分で大会に参加しました。

大食い大会では何人もの大飯食らいが居並ぶ中、平五郎はがむしゃらに食べ続け、それでもすぐに満腹の限界がやってきます。
「そろそろあの草の出番じゃ」
平五郎は懐から草の束を取り出して、むしゃむしゃと食べました。
「よし、これでいい…」

準備は整ったとばかりに、次の飯を手に取ろうとしたそのとき、なんと平五郎の身体がどんどん溶けてしまい、みるみるうちになくなってしまったのです。

とんでもないことが起きたと驚いた村人たちが、平五郎が持っていた草をよくよく調べてみたところ、それは食べ物を消化する草ではなく、人間の身体を溶かす草だったのだそうな。

むかしむかし、宮城県(みやぎけん)の 大河原(おおがわら)の さとやまに だいじゃが 住んでいました。人を まるのみにしてしまうくらい 大きなもので、村人たちは だいじゃを おそれながらも、たくさんはえているタケノコやワラビを めあてに さとやまに 入る日々(ひび)をすごしていました。

ある日、へいごろうという わかものが、やはりキノコをとりに さとやまを うろうろしていると、さわのほうから ひめいが 聞こえてきました。

「なんだなんだ?」
おどろいたへいごろうが さわに走ってみれば、やぶのむこうで、あのだいじゃが ぬるぬるとした体を うねらせて、もぞもぞ うごいていました。しかもあろうことか、だいじゃの 大きな口には 見おぼえのある 村人の体が。そう、ちょうどだいじゃが 人を まるのみするところでした。

あまりのおそろしさに こえも出せず、みうごきもできない へいごろう。村人が くわれるところを、ただただじっと 見ているしか ありませんでした。

人をたべて まんぷくになった だいじゃのおなかは まんまるとこえ、それはもう このよの 生きものとは おもえないすがたを しています。
ところが、これいじょうは 何もたべずとも しばらく まんぷくだろうというのに、だいじゃは そばにあった草を むしゃむしゃと かじりはじめたのです。

「ヘビが 草をくうんだべか…」
ふしぎにおもいながら ながめていた へいごろうでしたが、あらためて びっくりすることが おきました。

草

なんと、まんまると ふくれていた だいじゃのおなかが、しゅるるるると、しぼんでいったのです。
人を まるのみする前の すがたにもどった だいじゃは、もうここには ようはないと 言わんばかりに、大きな体をくねらせて 山のおくに きえていきました。

「あの草は もしや、食べたものを すぐに しょうかする 『やくそう』なのじゃろうか。となれば、これは だいはっけん。たくさん つんで、町でうれば おおもうけできるぞ」
さっきまでの おそろしいきぶんは、どこかへとんで行ってしまった へいごろう。こうしちゃ いられないと、つんだキノコを ほうりなげて、だいじゃが たべていた草をどんどん ひきぬきました。

たくさん草を 手に入れた へいごろうは、ちょうど うまいぐあいに、今夜、村で大ぐい大会が ひらかれることを おもいだします。
「この草があれば、大ぐい大会も らくしょうだべ」
にやにや ほくそえんだ へいごろうは、もう かったきぶんで 大会にさんかしました。

大ぐい大会では 何人もの 大めしぐらいが いならぶなか、へいごろうは がむしゃらに たべつづけ、それでもすぐに まんぷくのげんかいが やってきます。
「そろそろ あの草の でばんじゃ」
へいごろうは ふところから 草のたばを とり出して、むしゃむしゃと たべました。
「よし、これでいい…」

じゅんびは ととのったとばかりに、つぎのめしを 手にとろうとした そのとき、なんと へいごろうの体が どんどん とけてしまい、みるみるうちに なくなってしまったのです。

とんでもないことが おきたと おどろいた村人たちが、へいごろうが もっていた草を よくよくしらべてみたところ、それはたべものを しょうかする 草ではなく、にんげんの体を とかす草だったのだそうな。


むかしばなしを地域からさがす

東日本 北海道・東北地方 関東地方 中部・東海・北陸地方 西日本 関西地方 中国・四国地方 九州・沖縄地方

こちらもチェック