【青森】川下のじいさん

川下のじいさん 青森県六戸町
どうぶつ

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、十和田湖から流れてくる相坂川(おうさかがわ・奥入瀬川)のたもとに二組の年老いた夫婦が住んでいました。川下には正直なじいさんとばあさんが、川上には意地悪なじいさんとばあさんがおりました。

ある日のこと、川下の正直なじいさんが川辺で釣りをしていると、釣った魚を入れておく籠になぜか子犬が入っていました。
「おや、魚じゃなくて犬が釣れた気分じゃ」
喜んだ川下のじいさんは犬を持ち帰り、シロと名前を付けてばあさんと一緒に育てることにします。

シロはすくすくと大きくなり、川下のじいさんを背中に載せて山まで歩くほどに立派になりました。
あるとき、山でシロが
「あっちの山の兎ッコも、こっちの兎ッコもみんな来い~」
と吠えたところ、なんと、方々からたくさん兎がピョンピョンと跳び出てくるではありませんか。

川下のじいさん大喜び。兎を次々と仕留めては
「こりゃ大猟じゃ」
と持ち帰り、ばあさんが兎汁をこしらえて、美味しく美味しくいただきました。

ところが、川上の意地悪なじいさんがその話を耳にして
「こりゃいいことを聞いたわい」
早速、嫌がるシロに無理矢理跨り、山へ連れて行ってしまったのです。

山

山に着くと川上のじいさんはシロを急きたてます。
「ほれ、たくさん吠えて兎を呼べ」
ところがシロは
「あっちの山の蜂ッコも、こっちの蜂ッコもみんな来い~」と吠えたのでした。

するとどうでしょう。あちこちから蜂の大群がやってきて、お尻の針で川上のじいさんをチクチクと刺してしまったのです。

「なんてことを!」
蜂に刺されてすっかり腫れあがった顔を見た川上のばあさんは、怒りが止まりません。
残酷にもシロを川に突き落として沈め、溺れ殺してしまいました。

犬が落ちた瀬ということで、今でも土地の人はその辺りを犬落瀬(いぬおとせ)と呼んでいるのだとか。

さて、シロを殺してしまった川上のばあさんは、その亡骸を畑に埋めてしまいます。
話を聞いた川下のじいさんは驚くやら哀しむやら。泣く泣くその畑に出向いてみると、見たこともない木が一本生えていました。

「せめてこの木の枝を形見にするべえ」
川下のじいさんが枝を切り落として、何気なくその枝を振ってみると、不思議なことに大判小判が次々に湧いて出るではありませんか。

大判小判

またもやその話を聞いた川上のじいさん。よせばいいのに川下のじいさんからその枝を借りて、同じように振ってみました。
「大判小判よ、はよ出てこい。はよ出てこい」
ところが、出てくるのは何とも言えない汚いものばかり。
「なんじゃこれは! おお、汚い。おお、汚い。こんな役立たずな枝は燃やしてしまえ」
川上のじいさん、枝を燃やして灰にしてしまったのです。

せっかくのシロの形見を燃やされたものの、それでも残った灰をもらってきた川下のじいさん。
ちょうどそこへ鶴の群れが飛んできました。川下のじいさんが
「鶴の目に入れ」
と言いながら灰をひとつかみ投げると、目に命中したのでしょう、見事、何羽もの鶴が空から落ちてきたのです。

「こりゃすごいわい」
川下のじいさんが鶴を家に持ち帰って鶴鍋にして食べたので、やはりこのあたりを今では鶴喰(つるばみ)と呼ぶのだそうで。

そして案の定、川上のじいさんも真似をします。よせばいいのに、高い木に登って灰をたくさん撒きました。けれども、灰は鶴ではなく川上のじいさんの目に入ってしまい、じいさんは、木の下にいた川上のばあさんの上に落っこちてしまったのです。
ふたりそろって大怪我。
これに懲りて、それから二人は意地悪をしなくなったのだそうな。

むかしむかし、十和田湖(とわだこ)からながれてくる相坂川(おうさかがわ)のたもとに ふた組の 年おいたふうふが すんでいました。かわしもには しょうじきなじいさんと ばあさんが、かわかみには いじわるなじいさんと ばあさんがおりました。

ある日のこと、かわしもの しょうじきなじいさんが 川で魚つりをしていると、つった魚を入れておくカゴに なぜか子犬が入っていました。
「おや、魚じゃなくて 犬がつれた気分じゃ」
よろこんだ かわしものじいさんは 犬をもちかえり、シロと名前をつけて ばあさんといっしょに そだてることにします。

シロはすくすくと大きくなり、かわしものじいさんを せなかにのせて 山まであるくほどに りっぱになりました。
あるとき、山でシロが
「あっちの山のうさぎッコも、こっちのうさぎッコもみんな来い~」
とほえたところ、なんと、ほうぼうからたくさん うさぎがピョンピョンと とび出てくるではありませんか。

かわしものじいさん 大よろこび。うさぎをつぎつぎと しとめては
「こりゃ たいりょうじゃ」
ともちかえり、ばあさんがうさぎ汁(じる)をこしらえて、おいしく おいしくいただきました。

ところが、かわかみのいじわるなじいさんが その話を耳にして
「こりゃ いいことを聞いたわい」
さっそく、いやがるシロにむりやり またがり、山へつれて行ってしまったのです。

山

山につくと かわかみのじいさんは シロをせきたてます。
「ほれ、たくさんほえて うさぎをよべ」
ところがシロは
「あっちの山のハチッコも、こっちのハチッコも みんな来い~」とほえたのでした。

するとどうでしょう。あちこちからハチの たいぐんがやってきて、おしりのはりで かわかみのじいさんを チクチクと さしてしまったのです。

「なんてことを!」
ハチにさされて すっかりはれあがったかおを見た かわかみのばあさんは、いかりが止まりません。
ざんこくにも シロを川につきおとして しずめ、おぼれころしてしまいました。

犬がおちた瀬(せ)ということで、今でもとちの人は そのあたりを犬落瀬(いぬおとせ)と よんでいるのだとか。

さて、シロをころしてしまった かわかみのばあさんは、その なきがらを 畑にうめてしまいます。
話を聞いた かわしものじいさんは おどろくやら かなしむやら。なくなく その畑に出むいてみると、見たこともない木が一本 生えていました。

「せめてこの木のえだを 『かたみ』にするべえ」
かわしものじいさんが えだを切りおとして、なにげなく そのえだを ふってみると、ふしぎなことに 「おおばんこばん」がつぎつぎに わいて出るではありませんか。

大判小判

またもやその話を聞いた かわかみのじいさん。よせばいいのに かわしものじいさんから そのえだをかりて、同じように ふってみました。
「おおばんこばんよ、はよ出てこい。はよ出てこい」
ところが、出てくるのは なんとも言えない きたないものばかり。
「なんじゃこれは! おお、きたない。おお、きたない。こんなやくたたずな えだは もやしてしまえ」
かわかみのじいさん、えだをもやして 「はい」にしてしまったのです。

せっかくのシロのかたみを もやされたものの、それでものこった 「はい」をもらってきた かわしものじいさん。
ちょうどそこへツルのむれが とんできました。かわしものじいさんが、
「ツルの目に入れ」
と言いながら「はい」を ひとつかみなげると、目にめいちゅうしたのでしょう、みごと、なんばものツルが 空からおちてきたのです。

「こりゃすごいわい」
かわしものじいさんが ツルを家にもちかえって 「ツルなべ」にして食べたので、やはりこのあたりを 今では鶴喰(つるばみ)とよぶのだそうで。

そして あんのじょう、かわかみのじいさんも まねをします。よせばいいのに、高い木にのぼって 「はい」をたくさんまきました。けれども、「はい」はツルではなく かわかみのじいさんの目に入ってしまい、じいさんは、木の下にいた かわかみのばあさんの上に おっこちてしまったのです。
ふたりそろって おおけが。
これにこりて、それからふたりは いじわるをしなくなったのだそうな。


むかしばなしの舞台へでかけよう

犬落瀬・鶴喰

犬

さすがにシロにまつわる史跡は残っていませんが…



よみ いぬおとせ・つるばみ
住所 青森県六戸町
電話 0176-55-3111(六戸町役場)
時間
休み なし
料金 無料
その他  

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