むかしがたり

おしゃれなキツネは、ついつい季節を先取りしてしまって…「鳴けるようになったキツネ」

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鳴けるようになったキツネ 北海道岩見沢市

  • 動物

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、ある山里でのこと。
その年はいつもより雪がたっぷり積もりました。そろそろ春が来ても良いころあいなのに、まだまだ寒い日が続いていました。雪も全然溶けないのです。

それでも山里に住む動物たちは、雪の上を元気に駆け回っていました。

なかでも若いキツネは、おしゃれ好き。雪が溶けるのを待っていられません。分厚い冬の毛を早く脱ぎ捨てたい気持ちでいっぱいでした。
「冬の間ずっと着ていたから毛が汚れてしまって、みっともないや」
せっかちなキツネは、冬の毛を脱いで、短くて涼しい夏の毛になりました。

「ほーら、ツヤツヤのきれいな夏の毛だ。とっても素敵だろう?」
キツネは自慢の毛を見せてまわります。他の動物たちはまだまだ寒いので、分厚い冬の毛を着ていました。
「もう春だからね。早くきみたちも夏の毛になりなよ」
キツネは得意げに言うのでした。

しかし、冬はなかなか終わりません。むしろ却って大雪が降ったり、吹雪になることもありました。

雪

そしてあまりに寒い日が続いたものですから、薄着のキツネはとうとう風邪をひいてしまいました。体を丸くしてじっと寝ていましたが、寒くて寒くて仕方ありません。

ついにはゴホゴホと咳が出るようになって、声も出なくなりました。

心配したおじいさんキツネが見舞いにやって来て、若いキツネを叱ります。
「ばかなことを。まだ寒いのに夏の毛だなんて、あまりに早すぎるってもんじゃ。
咳が出て声が出ないのか。そうじゃなあ。フキノトウを食べると良いと聞いたけどのう」

早速キツネは川のそばに行き、雪の下に隠れているかわいらしいフキノトウを探して、パクパクと食べました。

フキノトウは苦い味。キツネは美味しいとは思わなかったものの、薬だと思って一生懸命食べました。
しばらくするとようやくゴホゴホの咳が止まりました。そしてキツネは再びコンコンと、普段どおり鳴けるようになったそうな。

むかしむかし、ある やまざとでのこと。
その年は いつもより ゆきがたっぷり つもりました。そろそろはるが 来てもよい ころあいなのに、まだまださむい日が つづいていました。ゆきもぜんぜん とけないのです。

それでもやまざとに すむどうぶつたちは、ゆきの上を げんきに かけまわっていました。

なかでも わかいキツネは、おしゃれずき。ゆきがとけるのを まっていられません。ぶあつい ふゆの「け」を 早くぬぎすてたい 気もちでいっぱいでした。
「ふゆのあいだ ずっときていたから 『け』がよごれてしまって、みっともないや」
せっかちなキツネは、ふゆの「け」を ぬいで、みじかくてすずしい なつの「け」になりました。

「ほーら、ツヤツヤの きれいななつの『け』だ。とってもすてきだろう?」
キツネはじまんの「け」を 見せてまわります。ほかのどうぶつたちは まだまださむいので、ぶあついふゆの「け」を きていました。
「もうはるだからね。早くきみたちも なつの『け』になりなよ」
キツネは とくいげに言うのでした。

しかし、ふゆはなかなか おわりません。むしろかえって 大ゆきが ふったり、ふぶきになることも ありました。

雪

そしてあまりに さむい日が つづいたものですから、うすぎのキツネは とうとうかぜをひいてしまいました。体をまるくして じっとねていましたが、さむくて さむくて しかたありません。

ついにはゴホゴホと 「せき」が出るようになって、こえも出なくなりました。

しんぱいした おじいさんキツネが みまいにやって来て、わかいキツネを しかります。
「ばかなことを。まださむいのに なつの『け』だなんて、あまりに 早すぎるってもんじゃ。
『せき』が出て こえが出ないのか。そうじゃなあ。フキノトウをたべると よいと聞いたけどのう」

さっそくキツネは 川のそばに行き、ゆきの下に かくれている かわいらしいフキノトウをさがして、パクパクとたべました。

フキノトウは にがいあじ。キツネはおいしいとは 思わなかったものの、くすりだと思って いっしょうけんめい たべました。
しばらくすると ようやくゴホゴホの「せき」が とまりました。そしてキツネは ふたたびコンコンと、ふだんどおり なけるように なったそうな。