【佐賀県】鶴と亀の旅

鶴と亀の旅 佐賀県伊万里市
どうぶつ

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、川辺に一匹の亀がいました。いつも石の上で日向ぼっこしながら、ぼんやり空を眺めていました。
広い空を悠々と鶴が飛んでいます。自由に大空を舞うその姿を、亀はうらやましいとずっと思っていました。
「鶴はいいのう。空を飛べたら、さぞ楽しいだろうにのう」
思わず亀が口に出した願い事を鶴が聞いたのでしょう。鶴がすうっと地面に下りて来ました。

「亀さんよ、空を飛びたいのかい」
「うん、飛んでみたいのう」
優しい鶴は考えました。しばらくすると、良い思いつきをしたようで、鶴はそばに転がっていた木の枝をくちばしにくわえました。

「この枝を使おう。亀さんよ、枝をわしがくわえて飛ぶから、この枝の端っこを強く噛んでおきなさい」
「そうしたら飛べるのかえ?」
亀が尋ねると、鶴は頷きました。
「そうじゃ。飛べるんじゃ。でもな、ひとつ約束してくれんと困る」
「飛べるんなら、何でも約束する」
「うん、わかった。じゃあな、飛んでる間は絶対に喋ったらダメじゃ。分かったかい?」
「うん、わかった。絶対喋らん」

亀

「絶対に絶対の絶対に喋ってはならんよ」
鶴は何度も繰り返し言いました。
亀も何度も頷きました。
「じゃあ、飛ぼうかのう。この枝の端っこを噛みなさいな」
鶴がくちばしに挟んだ枝の端を亀の口元に向けると、亀は言われたとおりに強く枝を噛みました。

鶴は大きく翼を拡げて飛び立ちます。あっという間に地面が遠くなり、空高く昇って行きました。
川も山も畑も小さく見えます。亀は大満足でした。

ところが、村の子供が鶴と亀を下から見つけて大騒ぎ。
「うわあ、見てみい、見てみい。鶴が亀をさらって飛んで行きよるぞ」
「本当だ、亀がさらわれてる!」
それを聞いた亀は思わず、
「おらはさらわれてるんじゃないやい!」
と叫んでしまったのです。
亀はあれよあれよという間に、空から落っこちてしまいましたとさ。

むかしむかし、川べに一ぴきの カメがいました。いつも石の上で ひなたぼっこしながら、ぼんやり空を ながめていました。
広い空を ゆうゆうとツルが とんでいます。じゆうに大空をまう そのすがたを、カメはうらやましいと ずっとおもっていました。
「ツルはいいのう。空をとべたら、さぞたのしいだろうにのう」
おもわずカメが 口に出したねがいごとを ツルが聞いたのでしょう。ツルがすうっと じめんに下りて来ました。

「カメさんよ、空をとびたいのかい」
「うん、とんでみたいのう」
やさしいツルは かんがえました。しばらくすると、よいおもいつきを したようで、ツルはそばにころがっていた 木のえだを くちばしにくわえました。

「このえだを つかおう。カメさんよ、えだをわしが くわえてとぶから、このえだのはしっこを つよくかんでおきなさい」
「そうしたら とべるのかえ?」
カメがたずねると、ツルはうなずきました。
「そうじゃ。とべるんじゃ。でもな、ひとつ やくそくしてくれんとこまる」
「とべるんなら、何でもやくそくする」
「うん、わかった。じゃあな、とんでる間はぜったいに しゃべったらダメじゃ。分かったかい?」
「うん、わかった。ぜったいしゃべらん」

亀

「ぜったいに ぜったいの ぜったいに しゃべってはならんよ」
ツルは何ども くりかえし言いました。
カメも何ども うなずきました。
「じゃあ、とぼうかのう。このえだのはしっこを かみなさいな」
ツルがくちばしにはさんだ えだのはしを カメの口もとにむけると、カメは言われたとおりに つよくえだを かみました。

ツルは大きく つばさをひろげて とび立ちます。あっというまに じめんが とおくなり、空たかく のぼって行きました。
川も 山も はたけも 小さく見えます。カメは大まんぞくでした。

ところが、村の子どもが ツルとカメを 下から見つけて 大さわぎ。
「うわあ、見てみい、見てみい。ツルがカメをさらって とんで行きよるぞ」
「本当だ、カメがさらわれてる!」
それを聞いたカメは おもわず、
「おらは さらわれてるんじゃないやい!」
と さけんでしまったのです。
カメは あれよあれよというまに、空から おっこちてしまいましたとさ。


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