【埼玉県】とんぼのやどり木

とんぼのやどり木 埼玉県所沢市
ふしぎおもしろ

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、秋津(あきつ)の村のお城に、厄介な殿さまが住んでおりました。殿さまは毎日毎日家来たちに無理なことばかり言っては、家来たちを困らせていたのです。

「明日から茶碗に盛る飯粒は、ちょうど千粒にするのじゃ」
「あの山が邪魔で遠くが見えん。山をなくしてしまえ」
「空を飛ぶ魚を見てみたいのう。一匹連れてまいれ」

こんな具合でしたから、家来たちは、
「今日はいったいどんな無茶をおっしゃられるつもりなのか…」
と、頭を抱える始末でした。

ある日のことです。
殿さまは家来たちと城の外へ出向きました。日射しは柔らかく、ぽかぽかとした暖かい日です。野山にはたくさんのトンボが飛んでいました。
殿さまはしばらくじっとトンボを眺め、そして家来に向き直って言いました。
「お前たち、トンボを捕まえることはできるか」
どんな無理を言い出すかと思っていた家来たちでしたが、それくらいならたやすいことだと安心しました。
「はい。捕まえてみせましょう」
「そうか。ならばわしの年の数だけ捕らえてまいれ」
「はっ。かしこまりました」

トンボ

安請け合いしたものの、殿さまの年の数ともなるとなかなか大変です。家来たちは野山を駆けずり回って、一生懸命トンボを捕まえました。
しばらく時間が経ちました。虫籠の中はトンボだらけ。
しかし何度数を数えても、トンボの数が殿さまの年の数に一匹だけ足りません。

あと一匹捕まえようにも、もう周りにいるトンボは全部捕まえてしまったので、もうどうしようもありませんでした。
「殿、申し訳ありませんが、一匹足りませぬ」
報せを聞いた殿さまは、大層怒り始めました。そして近くの神社の祠(ほこら)に行き、祠に向かって大声で叫び出しました。

「おい! 祠の主よ! お主に神の力があるのならば、このトンボを木にしてみよ! トンボが木になったなら、わしはもう二度と家来たちに無理なことは言うまい。しかしもしもできなかったら、この祠は取り壊してしまうぞ! 」
そう叫び終わると、殿さまは虫籠のトンボをわしづかみにし、祠の横に生えているケヤキの木に向かって投げつけました。

するとどうでしょう。ケヤキの木の又の部分から、するすると別の木が生えてきたではありませんか。
「こりゃびっくりだ…」
家来たちが驚いて声を上げるも、殿さまは無言です。
「殿、いかがなされましたか」
家来が尋ねますが、殿さまは口をパクパクと動かすだけで、声を出すことができません。
そうです。祠の神の不思議な力によって、殿さまは言葉を喋ることができなくなってしまったのでした。殿さまが祠の神に向かって言ったとおり、二度と家来たちに無理を言えなくなってしまったのです。

むかしむかし、秋津(あきつ)の村の おしろに、やっかいな とのさまが 住んでおりました。とのさまは まい日まい日 けらいたちに むりなことばかり言っては、けらいたちを こまらせていたのです。

「あしたから ちゃわんにもる めしつぶは、ちょうど千つぶに するのじゃ」
「あの山がじゃまで とおくが見えん。山をなくしてしまえ」
「空をとぶさかなを 見てみたいのう。一ぴきつれてまいれ」

こんなぐあいでしたから、けらいたちは、
「きょうは いったいどんなむちゃを おっしゃられるつもりなのか…」
と、あたまを かかえるしまつでした。

ある日のことです。
とのさまは けらいたちと しろの外へ 出向きました。日ざしは やわらかく、ぽかぽかとした あたたかい日です。の山には たくさんのトンボが とんでいました。
とのさまは しばらくじっと トンボをながめ、そしてけらいに 向きなおって 言いました。
「おまえたち、トンボを つかまえることはできるか」
どんなむりを 言い出すかと 思っていた けらいたちでしたが、それくらいなら たやすいことだと 安心しました。
「はい。つかまえてみせましょう」
「そうか。ならば わしの年のかずだけ とらえてまいれ」
「はっ。かしこまりました」

トンボ

やすうけ合い したものの、とのさまの 年のかずともなると なかなかたいへんです。けらいたちは の山を かけずり回って、いっしょうけんめい トンボを つかまえました。
しばらく時間が たちました。虫かごの中は トンボだらけ。
しかし何ど かずをかぞえても、トンボのかずが とのさまの年のかずに 一ぴきだけ 足りません。

あと一ぴき つかまえようにも、もうまわりにいる トンボはぜんぶつかまえて しまったので、もうどうしようも ありませんでした。
「との、もうしわけありませんが、一ぴき足りませぬ」
しらせを聞いた とのさまは、たいそう おこりはじめました。そして近くのじんじゃの 「ほこら」に行き、「ほこら」に向かって 大ごえで さけび出しました。

「おい! 『ほこら』のぬしよ! おぬしに かみの力が あるのならば、このトンボを 木にしてみよ! トンボが 木になったなら、わしはもう二どと けらいたちに むりなことは 言うまい。しかし もしもできなかったら、この『ほこら』は とりこわしてしまうぞ! 」
そうさけびおわると、とのさまは 虫かごのトンボを わしづかみにし、「ほこら」のよこに 生えている ケヤキの木に 向かってなげつけました。

するとどうでしょう。ケヤキの木の 「また」のぶぶんから、するすると べつの木が 生えてきたではありませんか。
「こりゃびっくりだ…」
けらいたちが おどろいて こえを上げるも、とのさまは むごんです。
「との、いかがなされましたか」
けらいが たずねますが、とのさまは 口をパクパクと うごかすだけで、こえを 出すことができません。
そうです。「ほこら」のかみの ふしぎな力によって、とのさまは ことばを しゃべることが できなくなってしまったのでした。とのさまが 「ほこら」のかみに 向かって言ったとおり、二どと けらいたちに むりを 言えなくなってしまったのです。


むかしばなしの舞台へでかけよう

日月神社

日月神社

秋津村の鎮守社として創建したとされ、秋津村が柳瀬川を挟んで南北に分村して以降は、埼玉県側の北秋津村の鎮守社として崇敬を受けています



よみ じつげつじんじゃ
住所 埼玉県所沢市北秋津367
電話 04-2998-9155(所沢市観光協会)
時間
休み なし
料金 無料
その他  

画像引用:ぶらり所沢ニュータウン様(http://8397.at.webry.info/201103/article_13.html)

むかしばなしを地域からさがす

東日本 北海道・東北地方 関東地方 中部・東海・北陸地方 西日本 関西地方 中国・四国地方 九州・沖縄地方

こちらもチェック