むかしむかし、滝の川(たきのがわ)という川が今の横浜あたりに流れていました。上流の小さな山に滝があり、そこから流れてくる川だったので、この名が付いたと言われていました。
その滝の滝つぼにはカッパが棲んでいたと言います。何百年も生きたカッパで、いたずら好き。滝の棲みかからのこのこと街道まで出掛けては、旅の人たちを驚かせたり、馬の背中に載せた荷物を盗んだりして楽しんでいました。
もちろん楽しんでいたのはカッパだけで、いたずらされたり荷物を盗まれた旅人たちは嬉しくありません。
皆が困っているとの噂を聞いた、近くに住む浪人が
「困っている人を助けるのも我の役目じゃ」
と、カッパの棲む滝まで出掛けて行きました。
この浪人はなかなかの剣術使いで、滝つぼで休んでいたカッパを見つけると、得意の剣さばきでカッパを驚かせ、巧みにやっつけてしまいます。

捕えられたカッパはすっかり観念したようで、涙を流しながら赦しを乞いました。
「どうか命だけはお助けください。私には夫がいたのですが、大蛇と戦って命を落としてしまいました。二人の子供を育てるために、これまで悪事を働きましたが、二度と人様に迷惑かけません」
「嘘を言って我を騙すと、ただじゃおかんぞ」
浪人がすごむと、カッパはますます涙を流し、
「嘘偽りはございません。その証に、私の命の次に大切な物を今宵、お届けしましょう」
そこまで言うのなら…と浪人はカッパを赦すことにしました。
その夜、浪人が寝ていると、ドスンと物が落ちる音がしました。
なにごとかと眠い目をこすり、外に出てみれば、玄関先にカッパの頭の骨が転がっていたそうです。
「世にも珍しいカッパの頭の骨とはいえ、貰っても嬉しくないのう」
浪人は苦笑いするしかなかったのだとか。
むかしむかし、滝の川(たきのがわ)という川が今の横浜(よこはま)あたりに ながれていました。じょうりゅうの 小さな山にたきがあり、そこからながれてくる川だったので、この名がついたと言われていました。
そのたきの たきつぼにはカッパがすんでいたと言います。何百年も生きたカッパで、いたずらずき。たきのすみかから のこのこと かいどうまで出かけては、たびの人たちを おどろかせたり、ウマのせなかにのせた にもつをぬすんだりして たのしんでいました。
もちろん たのしんでいたのはカッパだけで、いたずらされたり にもつをぬすまれた たびびとたちは うれしくありません。
みんながこまっている とのうわさをきいた、ちかくにすむ ろうにんが
「こまっている人を たすけるのも われのやくめじゃ」
と、カッパのすむ たきまで出かけて行きました。
このろうにんは なかなかの「けんじゅつつかい」で、たきつぼで休んでいたカッパを見つけると、とくいの けんさばきでカッパをおどろかせ、たくみにやっつけてしまいます。

とらえられたカッパはすっかり かんねんしたようで、なみだをながしながら ゆるしをこいました。
「どうかいのちだけは おたすけください。わたしには『おっと』がいたのですが、『だいじゃ』とたたかって いのちをおとしてしまいました。ふたりの子どもをそだてるために、これまであくじを はたらきましたが、にどと ひとさまにめいわくかけません」
「ウソを言ってわれをだますと、ただじゃおかんぞ」
ろうにんがすごむと、カッパはますます なみだをながし、
「うそいつわりは ございません。そのあかしに、わたしのいのちのつぎに たいせつなものを こよい、おとどけしましょう」
そこまで言うのなら…とろうにんはカッパをゆるすことにしました。
そのよる、ろうにんがねていると、ドスンと ものがおちる音がしました。
なにごとかと ねむい目をこすり、そとに出てみれば、げんかん先にカッパのあたまのホネが ころがっていたそうです。
「よにもめずらしい カッパのあたまのホネとはいえ、もらってもうれしくないのう」
ろうにんは にがわらいするしかなかったのだとか。