【神奈川県】歌をうたう三毛猫

歌をうたう三毛猫 神奈川県横浜市
おもしろどうぶつ

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、横浜の笹下(ささげ)という村にあったお寺でのお話です。お寺には和尚さんと、奥さんと、一匹の三毛猫が暮らしていました。奥さんは三毛猫をとっても大事にして可愛がっていました。
そしてとっても歌が上手。三毛猫を撫でながら、素敵な声で軽やかにいつも歌うのでした。

ある日のことです。
村人がお寺の前を通りかかりました。いつものようにお寺から奥さんの綺麗な歌声が聞こえてきます。しかしこの日は奥さんの声だけでなく、もうひとつ別の歌声も聞こえてきました。かわいらしい歌声です。
「子供も一緒に歌っているんじゃろうか」
村人は興味をそそられて、お寺の中を覗いてみました。

子供の姿はどこにもありません。そのかわり奥さんの膝の上に三毛猫が載っていました。そうです。もうひとつの可愛い歌声は、三毛猫の声だったのです。
「こりゃ驚いた。猫が歌を歌うなんて」
村人が奥さんに話しかけました。奥さんはにこりと笑って、
「そうなんですよ。私の真似をして歌うようになったのです」
と答えました。村人は感心しきり。
「そりゃあすごい。こんな可愛らしい猫は初めてじゃのう。村の者にも聞かせてやりたいねえ」

村人が他の村人に話したのでしょう。噂は噂を呼んで、村中の人たちが毎日三毛猫の歌声を聴きに来るようになりました。

三毛猫

何日か経ったころ、村人がいつものようにお寺に行ってみると、山門の石段のところに三毛猫が寝そべっていました。しかし三毛猫が全く幸せそうではないのです。物凄くつまらなそうな顔をしていたのです。
変だなあと思った村人は、三毛猫に声をかけました。
「おやおや、どうしたんじゃ。楽しくないのかい。歌を歌わないのかい」

すると三毛猫は村人のほうを向いて、こう答えました。
「昨日、足を滑らせて池に落ちてしもうたんよ」
三毛猫は歌を歌うくらいですから、もちろん人の言葉も喋られるのでした。
「そうかい。それで風邪を引いてしまったんじゃな?」
「いやいや。すぐに奥さんが助けてくれて、手ぬぐいで拭いてくれたし、熱い『おじや』も作って食べさせてくれたから、大丈夫じゃった」

「それならどうして元気がないんじゃ?」
「『おじや』が熱すぎて、舌を火傷してしもうた」
村人は笑って三毛猫の頭を撫でました。
「そうかそうか。じゃあ、元気が出るようにマタタビを取って来てやろう」
「マタタビ! 大好きなマタタビ!」
「そうじゃ、お前が好きなマタタビじゃ。ちょっと待っておれよ」

村人はマタタビを探しに出掛け、しばらくすると戻って来ました。
マタタビをもらって、三毛猫はご機嫌になりました。
何日かすると、舌の火傷もすっかり治りました。そして三毛猫は再び可愛らしい声で歌うようになったそうな。

むかしむかし、横浜(よこはま)の 笹下(ささげ)という村にあった お寺での お話です。お寺には おしょうさんと、おくさんと、一ぴきのミケネコが くらしていました。おくさんは ミケネコを とってもだいじにして かわいがっていました。
そしてとっても うたがじょうず。ミケネコを なでながら、すてきなこえで かろやかに いつもうたうのでした。

ある日のことです。
村人が お寺のまえを とおりかかりました。いつものように お寺から おくさんの きれいなうたごえが 聞こえてきます。しかしこの日は おくさんの こえだけでなく、もうひとつ べつのうたごえも 聞こえてきました。かわいらしいうたごえです。
「子どもも 一しょに うたっているんじゃろうか」
村人は きょうみをそそられて、お寺の中を のぞいてみました。

子どものすがたは どこにもありません。そのかわり おくさんの ひざの上に ミケネコがのっていました。そうです。もうひとつの かわいいうたごえは、ミケネコの こえだったのです。
「こりゃおどろいた。ネコがうたを うたうなんて」
村人がおくさんに 話しかけました。おくさんは にこりとわらって、
「そうなんですよ。わたしのまねをして うたうようになったのです」
とこたえました。村人は かんしんしきり。
「そりゃあすごい。こんなかわいらしい ネコははじめてじゃのう。村のものにも 聞かせてやりたいねえ」

村人が ほかの村人に 話したのでしょう。うわさは うわさをよんで、村中の人たちが まい日 ミケネコのうたごえを ききに来るようになりました。

三毛猫

何日か たったころ、村人がいつものように お寺に行ってみると、「さんもん」の石だんのところに ミケネコが ねそべっていました。しかしミケネコが まったくしあわせそうではないのです。ものすごく つまらなそうな かおをしていたのです。
へんだなあと おもった村人は、ミケネコに こえをかけました。
「おやおや、どうしたんじゃ。たのしくないのかい。うたをうたわないのかい」

するとミケネコは 村人のほうをむいて、こうこたえました。
「きのう、足をすべらせて 池におちてしもうたんよ」
ミケネコは うたをうたうくらいですから、もちろん人のことばも しゃべられるのでした。
「そうかい。それでかぜを ひいてしまったんじゃな?」
「いやいや。すぐにおくさんが たすけてくれて、手ぬぐいで ふいてくれたし、あつい『おじや』も作って 食べさせてくれたから、大じょうぶじゃった」

「それなら どうして元気が ないんじゃ?」
「『おじや』があつすぎて、したをやけどしてしもうた」
村人はわらって ミケネコのあたまを なでました。
「そうかそうか。じゃあ、元気が出るように マタタビを取って来てやろう」
「マタタビ! 大すきなマタタビ!」
「そうじゃ、おまえが すきなマタタビじゃ。ちょっとまっておれよ」

村人は マタタビを さがしに出かけ、しばらくすると もどって来ました。
マタタビをもらって、ミケネコは ごきげんになりました。
何日かすると、したのやけども すっかりなおりました。そしてミケネコは ふたたびかわいらしいこえで うたうようになったそうな。


むかしばなしを地域からさがす

東日本 北海道・東北地方 関東地方 中部・東海・北陸地方 西日本 関西地方 中国・四国地方 九州・沖縄地方

こちらもチェック