【栃木県】かなふり松

かなふり松 栃木県足利市
おもしろかんこうスポット

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、今から350年ほど前のことです。日本で最も古い学校のひとつとされる足利学校(あしかががっこう)では、そのころ3,000人を超える生徒たちが学問を学んでいました。

学校の7代目の校長は九華(きゅうか)という坊さんでした。その九華がまだ若かった頃のことです。
ひとりの生徒が悩んでいるところに、たまたま九華が通りかかりました。
「ううむ、わからない。わからない」
「どうしたのかね」
生徒は顔を上げて答えます。
「この漢字が難しくて読みかたが判らないのです」
九華はにこりと微笑んで言いました。
「そういえば、判らない漢字を紙に書いて、そこの松の木に結んでおくと、次の朝には読み方が書いてあるのだそうじゃよ」

良いことを聞いたと、さっそく生徒は紙に大きく漢字を書いて松の枝に結んでおきました。

次の日の朝、早起きしたその生徒は、ドキドキする気持ちを抑えて松の木に走りました。
するとどうでしょう、枝にくくってあった紙の漢字に振り仮名が振られていたのです。

かなふり松

これには生徒も大喜び。
起きてきた他の生徒たちにも、紙を見せて自慢します。他の生徒たちも
「そりゃあいいや。おいらも知らない漢字があったらやってみるべ」
と言い合いました。

次の日から松の木には、たくさんの紙が結ばれるようになりました。
しかし、どれだけ多くの紙が結ばれていても、次の朝には必ず全ての漢字に振り仮名が振られていたのです。

「誰が振り仮名を書いているんじゃろうか」
不思議に思った生徒たちは、相談して一晩中松の木を見張ることにしました。

その夜遅くのこと、じっと松の木を生徒たちが見張っていると、一人の人影が現れて松の木の下で止まりました。
「今日もこんなにたくさんあるのか」
声の主はそう言いながら、一枚一枚紙に振り仮名を振っていきます。
そして全ての紙に振り終わると
「これはわしの教え方が良くないのかもしれんなあ。頑張らねば」
そう呟いて帰っていきました。

そうです。振り仮名を振っていた人影は、校長の九華だったのでした。一部始終を見ていた生徒たちは、校長に余計な世話をかけてしまったことを反省しました。

それ以降、生徒たちは松の木を頼ることなく勉強に励んだのだそうな。

むかしむかし、今から350年ほど 前のことです。日本でもっとも古い 学校のひとつとされる足利学校(あしかががっこう)では、そのころ3,000人をこえる せいとたちが がくもんを学んでいました。

学校の7だいめの 校長は「きゅうか」という ぼうさんでした。その「きゅうか」が まだわかかったころのことです。
ひとりのせいとが なやんでいるところに、たまたま「きゅうか」が とおりかかりました。
「ううむ、わからない。わからない」
「どうしたのかね」
せいとは かおを上げてこたえます。
「このかんじが むずかしくて よみかたが わからないのです」
「きゅうか」は にこりとほほえんで 言いました。
「そういえば、わからないかんじを かみにかいて、そこのマツの木に むすんでおくと、つぎのあさには よみかたが かいてあるのだそうじゃよ」

よいことをきいたと、さっそくせいとは かみに大きく かんじをかいて マツのえだに むすんでおきました。

つぎの日のあさ、早おきした そのせいとは、ドキドキする きもちをおさえて マツの木にはしりました。
するとどうでしょう、えだにくくってあった かみのかんじに ふりがなが ふられていたのです。

かなふり松

これには せいとも大よろこび。
おきてきた ほかのせいとたちにも、かみを見せて じまんします。ほかのせいとたちも
「そりゃあいいや。おいらも しらないかんじが あったら やってみるべ」
と言いあいました。

つぎの日から マツの木には、たくさんのかみが むすばれるように なりました。
しかし、どれだけ多くのかみが むすばれていても、つぎのあさには かならずすべての かんじにふりがなが ふられていたのです。

「だれがふりがなを かいているんじゃろうか」
ふしぎにおもった せいとたちは、そうだんして ひとばんじゅう マツの木を 見はることにしました。

そのよるおそくのこと、じっとマツの木を せいとたちが見はっていると、ひとりの人かげが あらわれて マツの木の下で とまりました。
「きょうも こんなにたくさん あるのか」
こえのぬしは そう言いながら、いちまいいちまい かみにふりがなを ふっていきます。
そしてすべてのかみに ふりおわると
「これはわしの おしえかたが よくないのかもしれんなあ。がんばらねば」
そうつぶやいて かえっていきました。

そうです。ふりがなをふっていた 人かげは、校長の「きゅうか」だったのでした。いちぶしじゅうを 見ていた せいとたちは、校長によけいなせわを かけてしまったことを はんせいしました。

それいこう、せいとたちは マツの木を たよることなく べんきょうに はげんだのだそうな。


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