【滋賀県】天女の羽衣

天女の羽衣 滋賀県長浜市
ゆうめいかんこうスポット

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、余呉湖(よごこ)のほとりの村にひとりの男が住んでいました。男は漁師で、毎日、湖に舟を出しては魚を獲る暮らしをしていました。

ある日のこと、男がいつものように舟を出して漁をしていると、どこからかかぐわしい香りが漂って来ました。
「おや? このいい匂いは何だろう…」
男は香りがする方へ、舟を漕いで行きました。

するとどうでしょう。なんとも美しい女の人が、のんびりと水浴びをしているではありませんか。そしてそばに立つ柳の木の枝には、男が見たこともないような羽のように見事な衣が掛けてありました。男が嗅いだ良い香りは、この衣から漂って来ていたのです。

男はこっそり忍び寄ると、柳の枝に掛けていた衣をさっと奪いました。そして再び草むらの中に姿を隠しました。

しばらくして水浴びを終えた女が、衣を取りに柳の木に戻って来ました。あるはずの衣がありません。女はきょろきょろと周囲を見回し、必死になって衣を探しました。

天女

衣が見つからないことに絶望した女は、しゃがみこんで顔を覆って泣き始めます。そこへたまたま通りかかったかのように、男が何食わぬ顔で声をかけました。
「どうして泣いているんじゃ?」
「私は天からやって来ました。この湖で水浴びをしていたら、羽衣を失くしてしまったのです。あれがないと天に帰ることができないので、困っているのです」
女は涙をぬぐって弱弱しい声で答えました。

男は優しい声で、
「だったら家に来なさい。服ならあげようじゃないか」
と答え、天から来たという女を家に連れて帰りました。
しばらくしてふたりは結婚し、やがて男の子も生まれました。天女も男も幸せに暮らしました。

ところがある日のこと、家の片隅に積んであった藁の束の下に羽衣が隠してあるのを、天女が見つけてしまいます。
天女は失くしたと思っていた羽衣が、盗まれていたのだと気付きました。そして男と息子のことを涙を流して惜しいと思いながらも、羽衣を身に纏い、天に昇って行ったのでした。

残された息子は、突然母親が消えてしまったので、毎晩毎晩泣き続けました。
その泣き声はまるでお経のように聞こえたといいます。泣き声を聞いたお寺のお坊さんが感心して、息子を引き取ることになりました。

息子はお寺で熱心に勉強しました。頭の良い優れた子がお寺にいるという噂は、京の都にまで伝わりました。こんな優れた子を田舎に置いておくのはもったいないと考えた貴族が、息子を都に招きました。その後も息子は勉強を続けて、たいそう出世したといいます。その息子の名は、学問の神として名高い、あの菅原道真なのだそうです。

むかしむかし、余呉湖(よごこ)のほとりの村に ひとりの男が 住んでいました。男はりょうしで、まい日、みずうみに ふねを出しては 魚をとる くらしをしていました。

ある日のこと、男がいつものように ふねを出して りょうをしていると、どこからか かぐわしいかおりが ただよって来ました。
「おや? このいいにおいは 何だろう…」
男は かおりがする方へ、ふねを こいで行きました。

するとどうでしょう。なんともうつくしい 女の人が、のんびりと 水あびをしているでは ありませんか。そしてそばに立つヤナギの 木のえだには、男が見たこともないような はねのように みごとな「ころも」が かけてありました。男がかいだ よいかおりは、この「ころも」から ただよって来ていたのです。

男はこっそり しのびよると、ヤナギのえだに かけていた「ころも」を さっと うばいました。そしてふたたび 草むらの中に すがたをかくしました。

しばらくして 水あびをおえた 女が、「ころも」をとりに ヤナギの木に もどって来ました。あるはずの「ころも」が ありません。女はきょろきょろと しゅういを見まわし、ひっしになって 「ころも」をさがしました。

天女

「ころも」が見つからないことに ぜつぼうした女は、しゃがみこんで かおをおおって なきはじめます。そこへたまたま とおりかかったかのように、男が 何くわぬかおで こえをかけました。
「どうして ないているんじゃ?」
「わたしは 天から やって来ました。このみずうみで 水あびをしていたら、『はごろも』を なくしてしまったのです。あれがないと 天にかえることが できないので、こまっているのです」
女は なみだをぬぐって よわよわしいこえで こたえました。

男は やさしいこえで、
「だったら いえに来なさい。ふくなら あげようじゃないか」
とこたえ、天から来たという女を いえに つれてかえりました。
しばらくして ふたりはけっこんし、やがて男の子も 生まれました。天女(てんにょ)も男も しあわせに くらしました。

ところが ある日のこと、いえのかたすみに つんであった 「わら」のたばの下に 「はごろも」が かくしてあるのを、天女(てんにょ)が 見つけてしまいます。
天女(てんにょ)は なくしたとおもっていた 「はごろも」が、ぬすまれていたのだと 気づきました。そして男と むすこのことを なみだをながして おしいと思いながらも、「はごろも」を みにまとい、天にのぼって 行ったのでした。

のこされたむすこは、とつぜん ははおやが きえてしまったので、まいばんまいばん なきつづけました。
そのなきごえは まるで「おきょう」のように 聞こえたといいます。なきごえを聞いた お寺のおぼうさんが かんしんして、むすこを ひきとることに なりました。

むすこは お寺でねっしんに べんきょうしました。あたまのよい すぐれた子が お寺にいる といううわさは、「きょうのみやこ」にまで つたわりました。こんなすぐれた子を いなかに おいておくのはもったいないと かんがえた きぞくが、むすこを みやこに まねきました。そのごも むすこは べんきょうを つづけて、たいそう しゅっせしたといいます。そのむすこの名は、「がくもんのかみ」として 名だかい、あの菅原道真(すがわらのみちざね)なのだそうです。


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余呉湖

衣掛柳

琵琶湖の北にある湖で、別名「鏡湖」。ほとりには、天女が羽衣を掛けたという「衣掛柳」の木がある



よみ よごこ
住所 滋賀県長浜市余呉町
電話 0749-82-5909(奥びわ湖観光協会)
時間
休み なし
料金 無料
その他  

画像引用:余呉観光情報(http://yogokanko.jp/)、長浜観光協会(http://kitabiwako.jp/)

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