【京都府】一寸法師

一寸法師 京都府京都市
ふしぎようかいゆうめい

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、浪速(なにわ)の村におじいさんとおばあさんが暮らしておりました。おじいさんとおばあさんには子供がいませんでした。
ふたりはずっと子供が欲しいと思っていましたので、神様にお祈りし続けました。すると不思議なことに、男の子が生まれました。ところがその男の子は親指の先ほどの大きさしかない、小さな小さな赤ん坊だったのです。

「おおきに、おおきに。神さんが願いを聞き届けてくれはった。今は一寸(約3cm)しかあらへんけど、たくさん食べて大きく育てばよろし」
そう言って、ふたりは赤ん坊を大切に育てました。赤ん坊は一寸法師と名付けられました。

しかし何年経っても一寸法師の身体は小さなままでした。全然成長しないのです。それでも一寸法師はとっても元気いっぱい。しまいには、京の都に上って侍になりたいと言い出したのでした。

おじいさんもおばあさんも止めましたが、一寸法師の決意は変わりません。では仕方ないと、おじいさんとおばあさんは針を刀の代わりに持たせて、家から送り出しました。一寸法師は川に浮かべたお椀の舟に乗りこみ、一生懸命に箸で漕ぎながら都を目指したのです。

一寸法師

何ヶ月もかかって都に辿りついた一寸法師は、都で一番立派なお屋敷の門の前で叫びました。
「たのもうー、たのもうー」
「はいはい……あら、誰もおらへんわ」
出て来たお手伝いの人はきょろきょろと見回しましたが、一寸法師を見つけることができません。

「ここです、ここ」
下から声がするので、地面を見てみれば豆粒のような男の姿が。
「一寸法師といいます。身体はこのとおりやけど、誰にも負けまへん。ここで侍にしてください」
こりゃおもしろいヤツだと気に入られた一寸法師は、このお屋敷で働くことになりました。

ある日のこと。お屋敷のお姫さまが観音さまへお参りに行くことになりました。一寸法師もお姫さまのおともをしました。
その帰り道、突然二匹の鬼が現れて、あろうことか、お姫さまを連れ去ろうとしました。

「そうはさせるか!」
一寸法師はすぐさま針の刀を抜くと、鬼に飛びかかりました。
「なんじゃこの小さいのは」
鬼はげらげらと笑って一寸法師を馬鹿にしました。
「笑ってられるのは今のうちだけや!」
一寸法師はそう叫ぶと、鬼の腕にひょいっと飛び移りました。そしてぴょんぴょん跳ねると、鬼の顔を針の刀で思いっきり刺したのです。

「いてててて」
「まだまだ!」
一寸法師は鬼の身体じゅうを次々に刺しました。
鬼は一寸法師を捕まえようとしましたが、身体があまりに小さくて、しかもすばしっこいので全く捕まえることができません。
「こりゃかなわん」
とうとう鬼は逃げ出してしまいました。

鬼は逃げる時に金色に輝く小槌(こづち)を落としていきました。
「なにかしら、これは」
「姫さま、おそらくそれは『打出(うちで)の小槌』やないかと思います。振りながら『大きくなあれ』と言ってくれはりませんか」
お姫さまは小槌を手に取って、
「大きくなあれ、大きくなあれ」
と唱えました。
すると一寸法師の身体がみるみる大きくなり、大人の背丈になりました。
その後、一寸法師はお姫さまと結婚して、立派な侍になったのだそうな。

むかしむかし、浪速(なにわ)の村に おじいさんと おばあさんが くらしておりました。おじいさんと おばあさんには 子どもが いませんでした。
ふたりはずっと 子どもがほしいと 思っていましたので、かみさまに おいのりしつづけました。すると ふしぎなことに、男の子が 生まれました。ところが その男の子は おやゆびの さきほどの 大きさしかない、小さな小さな あかんぼうだったのです。

「おおきに、おおきに。かみさんが ねがいを 聞きとどけてくれはった。今は 一すん(やく3センチメートル)しか あらへんけど、たくさんたべて 大きくそだてば よろし」
そう言って、ふたりはあかんぼうを たいせつに そだてました。あかんぼうは 「いっすんぼうし」と名づけられました。

しかし 何年たっても 「いっすんぼうし」の体は 小さなままでした。ぜんぜん せいちょうしないのです。それでも「いっすんぼうし」は とっても 元気いっぱい。しまいには、京(きょう)のみやこに 上って さむらいになりたいと 言い出したのでした。

おじいさんも おばあさんも とめましたが、「いっすんぼうし」のけついは かわりません。では しかたないと、おじいさんと おばあさんは 「はり」を「かたな」の かわりにもたせて、家から おくり出しました。「いっすんぼうし」は 川にうかべた 「おわん」のふねに のりこみ、いっしょうけんめいに 「はし」でこぎながら みやこを 目ざしたのです。

一寸法師

何か月もかかって みやこに たどりついた 「いっすんぼうし」は、みやこで 一ばん りっぱなおやしきの もんのまえで さけびました。
「たのもうー、たのもうー」
「はいはい……あら、だれも おらへんわ」
出て来た お手つだいの人は きょろきょろと 見まわしましたが、「いっすんぼうし」を 見つけることが できません。

「ここです、ここ」
下から こえがするので、地めんを 見てみれば まめつぶのような 男のすがたが。
「『いっすんぼうし』といいます。体は このとおりやけど、だれにも まけまへん。ここで さむらいに してください」
こりゃ おもしろいヤツだと 気に入られた 「いっすんぼうし」は、このおやしきで はたらくことに なりました。

ある日のこと。おやしきの おひめさまが かんのんさまへ おまいりに 行くことになりました。「いっすんぼうし」も おひめさまの おともをしました。
そのかえり道、とつぜん二ひきの おにがあらわれて、あろうことか、おひめさまを つれさろうとしました。

「そうはさせるか!」
「いっすんぼうし」は すぐさま はりのかたなを ぬくと、おにに とびかかりました。
「なんじゃ この小さいのは」
おには げらげらと わらって、「いっすんぼうし」を ばかにしました。
「わらってられるのは 今のうちだけや!」
「いっすんぼうし」は そうさけぶと、おにのうでに ひょいっと とびうつりました。そして ぴょんぴょんはねると、おにのかおを はりのかたなで 思いっきり さしたのです。

「いてててて」
「まだまだ!」
「いっすんぼうし」は おにの体じゅうを つぎつぎに さしました。
おには「いっすんぼうし」を つかまえようと しましたが、体が あまりに小さくて、しかも すばしっこいので まったくつかまえることが できません。
「こりゃかなわん」
とうとうおには にげ出してしまいました。

おには にげる時に 金色にかがやく 「こづち」をおとしていきました。
「なにかしら、これは」
「ひめさま、おそらくそれは『うちでのこづち』やないかと 思います。ふりながら『大きくなあれ』と 言ってくれはりませんか」
おひめさまは 「こづち」を 手にとって、
「大きくなあれ、大きくなあれ」
と となえました。
すると「いっすんぼうし」の体が みるみる大きくなり、おとなのせたけに なりました。
そのご、「いっすんぼうし」は おひめさまと けっこんして、りっぱなさむらいに なったのだそうな。


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