むかしがたり

弘法大師とあまのじゃくが海に橋を架ける競争をしたところ…「橋杭岩」

ホーム > 関西地方 > 橋杭岩

橋杭岩 和歌山県串本町

  • ふしぎようかいかんこうスポット

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、弘法大師が天邪鬼(あまのじゃく)と一緒に旅をしていました。
ふたりは熊野(くまの)から歩き、串本(くしもと)までやって来ました。串本は海に面した村で、海を挟んで向こうには大島(おおしま)という島が横たわっています。
島へは舟で向かうのですが、海が荒れると舟を出すことはできません。嵐が続けば行き来が途絶えてしまうので、島の人は随分困っていました。

その話を耳にした天邪鬼は、ある考えを思いつきました。島へ橋を架ければ海が荒れていても島の人たちが行き来できるので、ぜひ架けましょうと弘法大師に持ちかけたのです。
心優しい弘法大師は賛成しました。
「それは良い思いつきです。ぜひやりましょう」
「しかし、ふたりで一つの橋を架けるのも面白くありませんね。どうでしょう、お互いに別々に橋を造って、どちらが良い橋を架けられるか競いませんか」
「ははは、面白い。競ってみましょう」
弘法大師は笑ってこの申し出を受け入れます。

しかし天邪鬼は島の人を喜ばせるためにこんなことを言い出したわけではありません。人を困らせることが大好きな天邪鬼は、弘法大師と一緒に旅をする途中、ずっと弘法大師を負かしてぎゃふんと言わせたいと考えていたのです。

「やすやすと罠にかかったもんだ」
ほくそ笑む天邪鬼は、続いてこんな提案をしました。
「ちょうど日が暮れて夜になりました。この一晩で橋を造ってしまって、朝起きた島の人を驚かせてやりましょうよ」
「うむ、それも良い考えですな。そうしましょう」
「ではまずは大師様から橋をお架けください」

夜の海

弘法大師は大きくうなずいて立ちあがると、近くの山へ歩いて行きます。山にある大きな大きな岩を両手で掴んで、よいしょっと持ち上げました。そのまま肩に担ぐと海まで運んで、今度はどぼーんと放り投げるのです。大きな大きな岩が次々と海に投げ込まれ、橋の柱がどんどん出来上がりました。

とんでもない怪力で次から次に岩を運んでは投げ入れる弘法大師。その姿を眺める天邪鬼は、最初こそ、
「一晩で島まで橋を渡すなんて、無理に決まっているじゃないか」
余裕の表情で高を括っていました。ところが、次々に立ち上がるたくさんの柱を見て、さすがに慌て始めます。

「こりゃまずい。このままだと夜が明けるまでに橋が出来てしまう」
天邪鬼はどうすればいいか考え、またまたひらめきました。
「そうだ。朝が来たと弘法大師に思わせればいい」
天邪鬼は「コケコッコー」と鶏の鳴き真似を繰り出しました。
さすがに鶏が鳴くにはあまりに時間が早かったので、弘法大師は何かの間違いだろうと思いました。
それでも天邪鬼が再び「コケコッコー」と鳴き真似をすると、さすがに二度間違いが続くことはあるまいと思いこんだ弘法大師は、仕方なく作業を止めてしまいました。

そんなわけで、ここには柱だけが海の途中まで置かれたまま、今もなお残っているのです。

むかしむかし、こうぼうだいしが あまのじゃくと いっしょに たびをしていました。
ふたりは熊野(くまの)からあるき、くしもとまで やってきました。くしもとは うみにめんした村で、うみをはさんで むこうには大島(おおしま)という「しま」が よこたわっています。
しまへは ふねでむかうのですが、うみがあれると ふねを出すことはできません。あらしがつづけば 行ききが とだえてしまうので、しまの人は ずいぶんこまっていました。

そのはなしを耳にした あまのじゃくは、あるかんがえを おもいつきました。しまへ「はし」をかければ うみがあれていても しまの人たちが 行ききできるので、ぜひかけましょうと こうぼうだいしに もちかけたのです。
こころやさしい こうぼうだいしは さんせいしました。
「それはよい おもいつきです。ぜひやりましょう」
「しかし、ふたりでひとつの はしをかけるのも おもしろくありませんね。どうでしょう、おたがいに べつべつに はしをつくって、どちらがよい はしを かけられるか きそいませんか」
「ははは、おもしろい。きそってみましょう」
こうぼうだいしは わらってこの もうしでを うけ入れます。

しかしあまのじゃくは しまの人を よろこばせるために こんなことを言い出したわけでは ありません。人をこまらせることが 大すきな あまのじゃくは、こうぼうだいしと いっしょに たびをする とちゅう、ずっと こうぼうだいしを まかしてぎゃふんと 言わせたいと かんがえていたのです。

「やすやすと ワナにかかったもんだ」
ほくそえむ あまのじゃくは、つづいてこんな ていあんをしました。
「ちょうど日がくれて よるになりました。このひとばんで はしをつくってしまって、あさ、おきた しまの人を おどろかせてやりましょうよ」
「うむ、それもよい かんがえですな。そうしましょう」
「ではまずは だいしさまから はしを おかけください」

夜の海

こうぼうだいしは 大きくうなずいて立ちあがると、ちかくの山へ あるいて行きます。山にある大きな大きな いわを りょうてでつかんで、よいしょっと もち上げました。そのままかたにかつぐと うみまではこんで、こんどは どぼーんと ほうりなげるのです。大きな大きないわが つぎつぎと うみになげこまれ、はしの「はしら」がどんどん できあがりました。

とんでもない かいりきで つぎからつぎに いわをはこんでは なげ入れる こうぼうだいし。そのすがたを ながめる あまのじゃくは、さいしょこそ、
「ひとばんで しままで はしをわたすなんて、むりにきまっている じゃないか」
よゆうの ひょうじょうで たかをくくっていました。ところが、つぎつぎに 立ち上がるたくさんの「はしら」を見て、さすがに あわてはじめます。

「こりゃまずい。このままだと よるがあけるまでに はしができてしまう」
あまのじゃくは どうすればいいか かんがえ、またまた ひらめきました。
「そうだ。あさが来たと こうぼうだいしに おもわせればいい」
あまのじゃくは「コケコッコー」とニワトリの なきまねを くり出しました。
さすがにニワトリがなくには あまりに じかんが早かったので、こうぼうだいしは 何かのまちがいだろうと おもいました。
それでもあまのじゃくが ふたたび「コケコッコー」と なきまねをすると、さすがに2ど まちがいが つづくことはあるまいと おもいこんだ こうぼうだいしは、しかたなく さぎょうを やめてしまいました。

そんなわけで、ここには 「はしら」だけが うみのとちゅうまで おかれたまま、今もなお のこっているのです。

 昔話の舞台へでかけよう

 橋杭岩

橋杭岩

串本の東海岸から紀伊大島方向へ大小40ほどの奇岩が立ち並んでいます。国の名勝、天然記念物に指定されています


よみ はしぐいいわ
住所 和歌山県串本町橋杭
電話 0735-62-3171(串本町観光協会)
時間 24時間
定休 なし
料金 無料
その他  

より大きな地図で 橋杭岩 を表示

画像引用:Fuku.St