むかしがたり

鼻から米粒が出てくるお地蔵さん…「鼻かけ地蔵」

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鼻かけ地蔵 兵庫県豊岡市

  • ふしぎかんこうスポット

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、城崎(きのさき)の温泉の川向かいにひとりの漁師が住んでいました。ある夜、漁師の夢にお地蔵さまが現れて、こう言いました。
「わしはもう随分長い間、川の底に沈んでおるんじゃが、そろそろ息が続かなくなってきた。苦しくてたまらんから、ちょっとお前さん、わしを川底から引き揚げてくれんか」
目が覚めた漁師は、なんともおかしな夢を見たもんだと思いながら、その朝もいつものように漁に出掛けました。

さっそく川に網を投げ入れてみると、獲れるわ、獲れる、山盛りの魚が網にかかるのです。
「おお、こりゃすごい。大漁じゃ大漁じゃ」
漁師は大喜びで魚を引き上げ、空っぽになった網を再び水の中に投げ込みました。

どうでしょう。なんとまたも網いっぱいにたくさんの魚が掛かっています。
「どういうことやろか。こんなに獲れるなんて」
既に舟の上には山ほどの魚が積まれていましたが、漁師は最後にもう一度だけ網を入れてみることにしました。

ところが今回はなんだか手ごたえが違います。魚の重さとはまた違った感じなのです。えいやっ、せいやっと掛け声をかけてなんとか網を引き揚げてみれば、中にはお地蔵さま。あの夢で見た通りのお地蔵さまが澄まし顔で網に引っ掛かっていたのでした。

たくさんの魚

「ああ、やっぱり夢は本当だったんじゃ」
漁師はありがたく思い、お地蔵さまを川岸まで運んで、綺麗に拭きあげました。そして涼しげな木の下にお地蔵さまを置いて祀りました。
すると不思議なことに、お地蔵さんの鼻の穴から米粒がぽとぽと落ちてきたのです。ぽとぽとぽとぽと…いつまで経っても米粒が落ち続けるものですから、漁師はお地蔵さんの首に箱を引っ掛けておきました。

翌朝、漁師がお地蔵さんのところへ行ってみると、箱から米が溢れていました。
「これはありがたい。ありがたい」
漁師は溜まった米を家に持ち帰り、それでも余った米は村人に分けてやります。

月日が経ったある日。
噂を聞いた他の村人が米を欲しがるようになりました。お地蔵さんがもっと米を出してくれれば、いくらでも分けてあげられるのだが、どうしたものかと漁師は考えるようになりました。
「そうじゃ、地蔵さんの鼻の穴が大きければ、勢いよくたくさん米が出てくるんじゃなかろうか」
そう閃いたものですから、善は急げと、漁師は金づちとノミを用意して、お地蔵さんのもとへ走りました。

しかし、鼻の穴を広げようとノミを打ったはいいものの、手元が狂ってしまいます。鼻の穴どころか、鼻をまるごと落としてしまったのでした。
鼻がなくなってしまったお地蔵さんは、それから全く米粒を出すことはなくなってしまったのだそうな。

むかしむかし、城崎(きのさき)の おんせんの 川むかいにひとりの りょうしが住んでいました。あるよる、りょうしのゆめに おじぞうさまが あらわれて、こう言いました。
「わしはもう ずいぶんながいあいだ、川のそこに しずんでおるんじゃが、そろそろ いきがつづかなくなってきた。くるしくてたまらんから、ちょっとおまえさん、わしを川ぞこから ひきあげてくれんか」
目がさめた りょうしは、なんともおかしな ゆめを見たもんだと おもいながら、そのあさも いつものように りょうに出かけました。

さっそく川にアミを なげ入れてみると、とれるわ、とれる、山もりのサカナがアミにかかるのです。
「おお、こりゃすごい。たいりょうじゃ たいりょうじゃ」
りょうしは 大よろこびでサカナを ひき上げ、空っぽになったアミを ふたたび水の中に なげこみました。

どうでしょう。なんとまたもアミいっぱいにたくさんの サカナがかかっています。
「どういうことやろか。こんなにとれるなんて」
すでにふねの上には 山ほどのサカナがつまれていましたが、りょうしはさいごに もういちどだけ アミを入れてみることにしました。

ところがこんかいは なんだか手ごたえがちがいます。サカナのおもさとは またちがったかんじなのです。えいやっ、せいやっと かけごえをかけて なんとかアミをひきあげてみれば、中には おじぞうさま。あのゆめで見たとおりの おじぞうさまが すましがおで アミにひっかかっていたのでした。

たくさんの魚

「ああ、やっぱりゆめは ほんとうだったんじゃ」
りょうしは ありがたくおもい、おじぞうさまを 川ぎしまではこんで、きれいにふきあげました。そしてすずしげな木の下におじぞうさまをおいて まつりました。
するとふしぎなことに、おじぞうさんの はなのあなから こめつぶが ぽとぽとおちてきたのです。ぽとぽとぽとぽと…いつまでたっても こめつぶが おちつづけるものですから、りょうしは おじぞうさんのくびに はこをひっかけておきました。

よくあさ、りょうしが おじぞうさんのところへ行ってみると、はこからこめが あふれていました。
「これはありがたい。ありがたい」
りょうしは たまったこめを 家にもちかえり、それでもあまったこめは 村人に分けてやります。

月日がたった ある日。
うわさをきいた ほかの村人がこめを ほしがるようになりました。おじぞうさんが もっとこめを出してくれれば、いくらでも分けてあげられるのだが、どうしたものかと りょうしはかんがえるようになりました。
「そうじゃ、じぞうさんの はなのあなが大きければ、いきおいよく たくさんこめが出てくるんじゃなかろうか」
そうひらめいた ものですから、ぜんはいそげと、りょうしは かなづちとノミを よういして、おじぞうさんのもとへ はしりました。

しかし、はなのあなを ひろげようとノミを うったはいいものの、手もとが くるってしまいます。はなのあなどころか、はなをまるごと おとしてしまったのでした。
はながなくなってしまった おじぞうさんは、それからまったく こめつぶを出すことは なくなってしまったのだそうな。

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 鼻かけ地蔵

鼻かけ地蔵

ひとつだけ願い事をすると、そのひとつだけ叶えてくれるとの伝説が残っています


よみ はなかけじぞう
住所 兵庫県豊岡市城崎町楽々浦
電話 0796-32-3663(城崎温泉観光協会)
時間 24時間
定休 なし
料金 無料
その他  

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画像引用:幸楽園様(http://blog.kinosaki-kourakuen.com/)