むかしがたり

鶴じゃなくて亀の恩返し?! しかも浦島太郎でもないお話…「亀の恩返し」

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亀の恩返し 広島県

  • どうぶつふしぎ

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、ある村にひとりの坊さんがおりました。村人たちがたくさんお金を集めて、村に大きな寺を建てることになりました。お寺には仏像を新しく造って置くことも決まっていました。
寺のお堂や仏像には黄金を塗って、それは立派な立派なものにするはずでした。しかし、黄金はこの村の辺りでは手に入れることができません。
そこで、たくさんのお金を持って、坊さんは京に旅立ちました。京でお金と黄金を交換してもらうために。

京で無事に黄金を手に入れた坊さん。あとは村に帰るだけだと、坊さんは途中の浜辺から船に乗ろうとしました。
ところが、坊さんの眼の前で大変なことが起きました。浜辺の漁師たちが大きな海亀を捕まえて殺そうとしていたのです。
「これこれ、海亀を殺してはならねえ」
漁師たちに声を掛けた坊さんは、持っていた黄金の一部を漁師たちに分け与えて、海亀を買い取ります。思わぬ儲けものをしたと、漁師たちはほくほく顔で立ち去って行きました。
坊さんは海亀を海に逃がしてやりました。

安心した坊さんは、ようやく船に乗り込みます。船はのんびりと出航し、坊さんの村がある町へまっすぐ向かいました。
しかし、あろうことか、船が海賊に襲われてしまうのです。恐ろしい海賊は、船をあっという間に乗っ取りました。
「ほう、これは凄い黄金があるじゃないか。坊さんよ、この黄金は俺たちがもらっておくぞ。
そうとなれば、お前には用はない。今すぐ海に飛び込んでしまえ。飛び込まないなら、投げ捨ててやるぞ」
そうやって海賊が脅すものですから、坊さんは肝を冷やしながら、それでも仕方なく海に飛び込みました。海賊はそのまま黄金を積んだ船を奪って、どこかへ消えて行ってしまいました。

かたや、海に飛び込んだ坊さんは、ちょうどすぐそばに岩のようなものがあったので、こりゃ助かったと両手で掴みました。
しかし、岩にしては妙なのです。岩なのに動いているのです。よくよく見てみると、それは岩などではなく、海亀の甲羅でした。

海亀

実はこの海亀は、さきほど坊さんが浜辺で助けた海亀なのでした。
「おお、亀よ。ありがとうな、助かったわい」
亀はそのまま坊さんを甲羅の上に載せて、坊さんの村がある町の浜辺まで連れて行ってくれました。
坊さんは無事に寺に帰り、村人たちにいきさつを話しました。
「恩を忘れず返す亀とは、ありがたい亀じゃ」
皆はそう言い合いました。

それからしばらく月日が流れたある日のこと。
寺がほぼ完成し、あとは黄金を塗るだけになったときに、寺に黄金を売りに来た男がいました。
坊さんの顔を見て、男はびっくり。実はその男、黄金と船を奪って坊さんを海に飛び込ませた海賊だったのです。
「こりゃまずい。捕まって牢屋に入れられるかもしれん」
そう思うと、男は恐ろしくてぶるぶる震えています。

坊さんもまた、その男の正体があの海賊だと見抜いていました。
ところが、坊さんは何も言わず、男を捕まえもせず、お金を払って男の黄金を買い取ったのでした。
男は代金を受け取ると、逃げるように寺から出て行ったのだそうな。

むかしむかし、ある村に ひとりの ぼうさんがおりました。村人たちが たくさんお金をあつめて、村に大きな寺を たてることになりました。お寺には ぶつぞうをあたらしくつくって おくこともきまっていました。
寺のおどうや ぶつぞうには おうごんをぬって、それはりっぱなりっぱな ものにするはずでした。しかし、おうごんはこの村のあたりでは 手に入れることができません。
そこで、たくさんのお金をもって、ぼうさんは「きょう」にたび立ちました。「きょう」でお金とおうごんを こうかんしてもらうために。

「きょう」でぶじに おうごんを手に入れた ぼうさん。あとは村に かえるだけだと、ぼうさんは とちゅうのはまべから ふねにのろうとしました。
ところが、ぼうさんの目のまえで たいへんなことが おきました。はまべのりょうしたちが 大きなウミガメを つかまえて ころそうとしていたのです。
「これこれ、ウミガメを ころしてはならねえ」
りょうしたちに こえをかけた ぼうさんは、もっていたおうごんの いちぶをりょうしたちに わけあたえて、ウミガメをかいとります。おもわぬもうけものをしたと、りょうしたちは ほくほくがおで 立ちさって行きました。
ぼうさんは ウミガメをうみに にがしてやりました。

あんしんしたぼうさんは、ようやくふねに のりこみます。ふねはのんびりと しゅっこうし、ぼうさんの村がある町へ まっすぐむかいました。
しかし、あろうことか、ふねが かいぞくに おそわれてしまうのです。おそろしいかいぞくは、ふねをあっというまに のっとりました。
「ほう、これはすごい おうごんがあるじゃないか。ぼうさんよ、このおうごんは おれたちがもらっておくぞ。
そうとなれば、おまえには ようはない。今すぐうみに とびこんでしまえ。とびこまないなら、なげすててやるぞ」
そうやってかいぞくが おどすものですから、ぼうさんは きもをひやしながら、それでもしかたなく うみにとびこみました。かいぞくはそのまま おうごんをつんだ ふねをうばって、どこかへきえて行ってしまいました。

かたや、うみにとびこんだ ぼうさんは、ちょうどすぐそばに いわのようなものがあったので、こりゃたすかったと りょうてで つかみました。
しかし、いわにしては みょうなのです。いわなのに うごいているのです。よくよく見てみると、それはいわなどではなく、ウミガメのこうらでした。

海亀

じつはこのウミガメは、さきほど ぼうさんがはまべで たすけたウミガメなのでした。
「おお、カメよ。ありがとうな、たすかったわい」
カメはそのまま ぼうさんをこうらの上にのせて、ぼうさんの村がある 町のはまべまで つれて行ってくれました。
ぼうさんは ぶじに寺にかえり、村人たちに いきさつを はなしました。
「おんをわすれず かえすカメとは、ありがたいカメじゃ」
みなは そう言いあいました。

それからしばらく月日がながれた ある日のこと。
寺がほぼ かんせいし、あとはおうごんを ぬるだけになったときに、寺におうごんを うりに来た男がいました。
ぼうさんのかおを見て、男はびっくり。じつはその男、おうごんとふねをうばって ぼうさんを うみにとびこませた かいぞくだったのです。
「こりゃまずい。つかまって ろうやに入れられるかもしれん」
そうおもうと、男はおそろしくて ぶるぶる ふるえています。

ぼうさんもまた、その男の正体が あのかいぞくだと 見ぬいていました。
ところが、ぼうさんは何も言わず、男をつかまえもせず、お金をはらって 男のおうごんを かいとったのでした。
男は だいきんをうけとると、にげるように 寺から出て行ったのだそうな。