むかしむかし、一匹の兎が島にいました。兎は海の向こう岸に行きたいと思っていました。けれども、兎は泳ぎが得意ではありませんから、海を泳いで渡ることはできません。
「なんとかしてあっちに渡る方法はないかなあ」
そうやって浜辺で考えていると、一匹の鮫が兎に近づいてきました。鮫の姿を見ていた兎は、とびきり素晴らしい考えが浮かんで、思わず飛び跳ねてしまいます。
兎はすぐに鮫に声を掛けました。
「なあなあ、鮫さんよ。お前さんは仲間がいるのかい?」
鮫は笑って答えました。
「そりゃもう、たくさんいるともさ」
「そうかい。じゃあ、おらたち兎の仲間と鮫の仲間、どっちが数が多いか比べっこしないかい?」
鮫はまたまた笑って言いました。
「ハハハ。そりゃわしら鮫のほうが多いに決まっておるが、そう言うならば、比べてみてもええぞ」
兎はニヤリと笑って頷きます。
「ほんじゃあ、ここから向こう岸まで仲間を並べて浮かんでくれい。おらが鮫たちの背中を飛び跳ねながら数を数えるから」
鮫はすぐに仲間を呼びに行きました。しばらくすると、浜辺から向こう岸までずらりと鮫が並びました。
「準備できたぞー」
鮫が叫ぶと、兎は待ってましたとばかりに、鮫の背中をぴょんぴょんと跳ねて行きます。
「こりゃラクチンだ」
兎は我ながら良い考えだったと有頂天になりました。
あまりに調子に乗りすぎたのでしょう。あと1匹分の鮫の背中の上を跳ねたら、もう向こう岸だというところで、兎は口に出してしまいました。
「馬鹿な鮫たちめ。まんまと騙されたな」
それを聞いた鮫は怒りました。そして兎を捕まえると、その白い毛皮を食い破って剥いでしまったのです。
毛皮をむしり取られた兎は、悲しくて痛くて仕方ありません。辿りついた浜辺でしくしくと泣いてしまいました。
そこに大勢の神様たちが、歩いて通りかかりました。
「どうしたのだ? そんな姿で泣いてしまって」
兎が事情を話すと、神様たちはこう言いました。
「それなら、海の水で身体をよく洗って、風が吹く山の上で、おひさまに干すといい」
兎は言われた通りに、海の水で身体を洗い、山の上で身体を干しました。しかし、身体が乾いていくにつれて、塩が傷口にじんじんと沁みて、ますます痛くて堪りません。
再び浜辺に下りて来たのはいいけれど、痛くて痛くて兎はずっと声を上げて泣いていました。
そこへ今度は別の神様が、ひとりで歩いてきました。その神様は、わんわん泣いている兎を見つけるとやはり理由を尋ねました。
兎はまた事情を話しました。神様は大きくうなり、
「それはいかん。すぐに川に行って、きれいな水で身体を洗いなさい。それからガマの穂を敷いて寝転がっていれば、じきに治るだろう」
と答えて、足早に立ち去りました。
兎は言われたとおりに川に行き、きれいな水で身体を洗いました。痛みがだんだん引いて行きました。
そして川辺に生えているガマの穂をたくさん集めて、地面に敷き、横になって休みました。
やがて、あれほど痛くて苦しかったのが嘘のようになくなり、再び白い毛が生えて、元の姿に戻ることができたのだそうな。
むかしむかし、1ぴきのウサギが しまに いました。ウサギはうみの むこうぎしに行きたいと おもっていました。けれども、ウサギはおよぎが とくいではありませんから、うみをおよいで わたることはできません。
「なんとかして あっちにわたる ほうほうはないかなあ」
そうやって はまべでかんがえていると、1ぴきのサメが ウサギにちかづいてきました。サメのすがたを 見ていたウサギは、とびきりすばらしい かんがえがうかんで、おもわず とびはねてしまいます。
ウサギはすぐに サメにこえをかけました。
「なあなあ、サメさんよ。おまえさんは なかまがいるのかい?」
サメはわらって こたえました。
「そりゃもう、たくさんいるともさ」
「そうかい。じゃあ、おらたち ウサギのなかまと サメのなかま、どっちがかずが多いか くらべっこしないかい?」
サメはまたまた わらって言いました。
「ハハハ。そりゃわしら サメのほうが多いに きまっておるが、そう言うならば、 くらべてみてもええぞ」
ウサギはニヤリと わらってうなずきます。
「ほんじゃあ、ここから むこうぎしまで なかまをならべて うかんでくれい。おらが サメたちのせなかを とびはねながら かずをかぞえるから」
サメはすぐに なかまをよびに 行きました。しばらくすると、はまべから むこうぎしまで ずらりとサメが ならびました。
「じゅんび できたぞー」
サメがさけぶと、ウサギは まってましたとばかりに、サメのせなかを ぴょんぴょんと はねて行きます。
「こりゃラクチンだ」
ウサギは われながら よいかんがえだったと うちょうてんに なりました。
あまりにちょうしに のりすぎたのでしょう。あと1ぴきぶんの サメのせなかの 上をはねたら、もうむこうぎしだと いうところで、ウサギは口に出してしまいました。
「ばかなサメたちめ。まんまと だまされたな」
それをきいたサメは おこりました。そしてウサギを つかまえると、その白いけがわを くいやぶって はいでしまったのです。
けがわを むしりとられたウサギは、かなしくて いたくて しかたありません。たどりついた はまべでしくしくと ないてしまいました。
そこにおおぜいの かみさまたちが、あるいて とおりかかりました。
「どうしたのだ? そんなすがたで ないてしまって」
ウサギが じじょうをはなすと、かみさまたちは こう言いました。
「それなら、うみの水で からだを よくあらって、かぜがふく 山の上で、おひさまに ほすといい」
ウサギは 言われたとおりに、うみの水で からだをあらい、山の上で からだをほしました。しかし、からだが かわいていくにつれて、しおが きずぐちに じんじんとしみて、ますますいたくて たまりません。
ふたたび はまべに下りて来たのはいいけれど、いたくて いたくて ウサギはずっと こえを上げて ないていました。
そこへこんどは べつのかみさまが、ひとりで あるいてきました。そのかみさまは、わんわん ないているウサギを見つけると やはりりゆうを たずねました。
ウサギはまた じじょうをはなしました。かみさまは大きくうなり、
「それはいかん。すぐに川に行って、きれいな水で からだをあらいなさい。それからガマの『ほ』を しいて ねころがっていれば、じきに なおるだろう」
とこたえて、あしばやに 立ちさりました。
ウサギは 言われたとおりに 川に行き、きれいな水で からだをあらいました。いたみがだんだん ひいて行きました。
そして川べに生えている ガマの「ほ」を たくさんあつめて、地めんにしき、よこになって 休みました。
やがて、あれほどいたくて くるしかったのが うそのようになくなり、ふたたび白い「け」が生えて、もとのすがたに もどることが できたのだそうな。
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白兎神社
よみ | はくとじんじゃ |
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住所 | 鳥取県鳥取市白兎宮腰603 |
電話 | 0857-59-0047 |
時間 | 24時間 |
定休 | 無休 |
料金 | 無料 |
その他 |
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画像引用:鳥取県広報連絡協議会様(http://www.kouhouren.jp/album/)