【福井県】よの木の化けもん

よの木の化けもん 福井県福井市
おもしろ

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、福井の町の真ん中に、大きな大きな「よの木」がありました。よの木とはエノキのことで、枝を大きく伸ばしては、数え切れないくらいの葉っぱをつけていました。

日射しの強い日、よの木の木陰は、道行く人びとのちょうど良い一休みの場になりました。突然のにわか雨のときには、よの木の下で雨宿りする人がいました。

町の人にも旅の人にも親しまれていたよの木でしたが、いつのころからか、よの木の下に化けもんが出るという噂が流れました。
昼間は何事も起こらないのですが、日が落ちて辺りが真っ暗になると、恐ろしい化けもんが現れるのだそうな。
この噂が広まってからは、さすがに人びとも不気味に思ったのでしょう。夜のうちによの木のそばに近寄る人は、全くいなくなってしまいました。

それでも無鉄砲で元気な若者というのは、どこにでも居るものです。仲間内でその化けもんの話になったとき、ある若者がこう言い切りました。
「化けもんなんか何も怖いことはありゃせん。よし、わしが今から化けもんを退治してやろう」

皆は若者を止めましたが、彼は聞き入れません。
しとしとと雨が降る中、若者は傘をさしてよの木へと向かいました。

傘

雨が降り続くよの木の下に立って、若者はひとりでじっと化けもんが出るのを待ちました。
「まだ出ないか、まだ出ないか…」

若者はかなり長い時間待ち続けましたが、化けもんどころかタヌキの一匹も出てきません。おまけに夜も更けたので、かなり冷え込んできました。
「ぶるぶる。おお寒い。化けもんなんか出やしないじゃないか。もう疲れたし、帰るかのう」
こう呟いて、若者が帰ろうとした、そのときです。

「ありゃ?」
歩きだそうとしても、手に持っている傘が動きません。何かに掴まれたかのように、傘が動かないのです。
「ば、化けもんじゃー!」
若者は傘をほったらかして、一目散に走って逃げ帰りました。

あくる日、よの木の前を通りかかった人が、よの木の枝に傘が引っ掛かっているのを見たんだとさ。

むかしむかし、福井(ふくい)の町の まん中に、大きな大きな「よの木」が ありました。よの木とは エノキのことで、えだを大きく のばしては、かぞえきれないくらいの はっぱをつけていました。

日ざしのつよい日、よの木の 木かげは、道行く人びとの ちょうどよい ひと休みの「ば」になりました。とつぜんの にわか雨のときには、よの木の下で 雨やどりする人がいました。

町の人にも たびの人にも したしまれていた よの木でしたが、いつのころからか、よの木の下に ばけもんが 出るといううわさが ながれました。
ひるまは何ごとも おこらないのですが、日がおちて あたりが まっくらになると、おそろしいばけもんが あらわれるのだそうな。
このうわさが 広まってからは、さすがに人びとも ぶきみに思ったのでしょう。よるのうちに よの木のそばに ちかよる人は、まったく いなくなってしまいました。

それでも むてっぽうで げんきな わかものというのは、どこにでも いるものです。なかまうちで そのばけもんの 話になったとき、あるわかものが こう言いきりました。
「ばけもんなんか 何もこわいことは ありゃせん。よし、わしが 今から ばけもんを たいじしてやろう」

みなは わかものを とめましたが、かれは聞き入れません。
しとしとと 雨がふる中、わかものは かさをさして よの木へと 向かいました。

傘

雨がふりつづく よの木の下に立って、わかものは ひとりでじっと ばけもんが 出るのを まちました。
「まだ出ないか、まだ出ないか…」

わかものは かなり長い時間 まちつづけましたが、ばけもんどころか タヌキの一ぴきも 出てきません。おまけによるも ふけたので、かなり ひえこんできました。
「ぶるぶる。おおさむい。ばけもんなんか 出やしないじゃないか。もうつかれたし、かえるかのう」
こうつぶやいて、わかものが かえろうとした、そのときです。

「ありゃ?」
あるきだそうとしても、手にもっている かさが うごきません。何かに つかまれたかのように、かさが うごかないのです。
「ば、ばけもんじゃー!」
わかものは かさを ほったらかして、いちもくさんに はしって にげかえりました。

あくる日、よの木のまえを とおりかかった人が、よの木のえだに かさが ひっかかっているのを 見たんだとさ。


画像引用:二宮町観光協会(http://urx.mobi/zO8K)

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