【石川県】物貸し石

物貸し石 石川県七尾市
ふしぎ

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、七尾(ななお)の町の外れに大きな白い石がありました。石はいつの話だったか、空から落ちて来たそうで、
「ありがたい神様の石に違いない」
と言って、村人はこの石を大切にしていました。

ある年、村は日照りが続いて、作物が全く実りませんでした。村には米も野菜も何も残っていません。今晩、明日の朝食べる物にも不自由するありさまでした。

村人は困ってしまいました。もはやこの石の前に集まって、神頼みするしかありません。
「石の神さん、どうかどうか、少しばかりの米の飯と他に何か食べるものを皆に恵んでやってくんろ…」
熱心に熱心に手を擦り合わせて祈った村人たち。長々と祈りをささげたあとは、お腹をすかせて家々へ帰りました。

翌朝のことです。
ひとりの村人がもう一度お祈りをしようと石の前にやって来ました。すると石の前には、食べきれないほどの量の炊き立てのごはんと、獲れたての魚、美味しそうな漬物が置いてあったのです。
村人は大喜びで皆を呼び集め、石の神様のおかげだと感謝して、ごはんを食べました。

ごはん

幸いにもその後は雨の恵みもあり、昨年とは打って変わっての豊作になりました。
石の恩を忘れなかった村人たちは、たくさんの米や魚や漬物を、石の前にお供えしました。石から借りていたものを、石に返したというわけです。

こうして飢えたときは石にお願いして食べものを借り、実りの季節になると借りていた食べものを石に返すことが、何年も続きました。
ところが村には良い心の持ち主だけではなく、曲がった心の持ち主もいました。
「借りても返さなければええじゃないか」
その男は石からたくさんの米や魚や漬物や、はたまた大金を借りっぱなしにし、まったく返そうとしなかったのです。

石の神様は怒りました。
そしてこれ以来、石は誰にも何も貸してくれなくなったのだそうな。

むかしむかし、七尾(ななお)の町の外れに 大きな白い石が ありました。石はいつのはなしだったか、空からおちてきたそうで、
「ありがたい かみさまの石に ちがいない」
と言って、村人は この石を たいせつにしていました。

ある年、村は 日でりがつづいて、さくもつが 全くみのりませんでした。村には 米もやさいも 何ものこっていません。こんばん、明日のあさ たべる物にも ふじゆうする ありさまでした。

村人は こまってしまいました。もはやこの石の前に あつまって、かみだのみするしか ありません。
「石のかみさん、どうかどうか、少しばかりの 米のめしと ほかに何か たべるものを みなに めぐんでやってくんろ…」
ねっしんに ねっしんに 手をすり合わせて いのった村人たち。ながながと いのりをささげたあとは、おなかをすかせて いえいえへかえりました。

よくあさのことです。
ひとりの村人が もう一ど おいのりをしようと 石の前に やって来ました。すると石の前には、たべきれないほどの りょうの たき立てのごはんと、とれたての魚、おいしそうな つけものが おいてあったのです。
村人は大よろこびで みなを よびあつめ、石のかみさまの おかげだと かんしゃして、ごはんを たべました。

ごはん

さいわいにも そのごは 雨のめぐみもあり、さくねんとは うってかわっての ほうさくになりました。
石のおんを わすれなかった 村人たちは、たくさんの米や魚やつけものを、石の前に おそなえしました。石から かりていたものを、石にかえした というわけです。

こうしてうえたときは 石におねがいして たべものを かり、みのりのきせつになると かりていたたべものを 石にかえすことが、何年も つづきました。
ところが 村には よい心の もちぬしだけではなく、まがった心の もちぬしもいました。
「かりても かえさなければ ええじゃないか」
その男は 石からたくさんの 米や魚やつけものや、はたまた大金を かりっぱなしにし、まったく かえそうとしなかったのです。

石のかみさまは おこりました。
そしてこれいらい、石は だれにも 何もかしてくれなくなったのだそうな。


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