むかしがたり

夜になると飴を買いに来る女性の正体は…「子育て幽霊」

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子育て幽霊 静岡県湖西市

  • ふしぎゆうめいかんこうスポット

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、ある飴屋の主人が夜になったので、店を閉めようとしていました。
そこへ一人の女がやって来ました。女の髪はボサボサとしていて、顔は青白く、消えるかのような小さな声で
「すみません。飴をひとつくださいな」
そう言って、銭を一文差し出しました。

女の様子がなんだか不気味だったので、主人は断ろうとしました。しかし何度も頼むものですから、根負けしてしまいます。主人は飴をひとつ売りました。

次の晩、また同じ時間に女がやって来て、
「すみません。飴をひとつくださいな」
と言って一文差し出しました。
主人は飴をひとつ売りました。
「どこに住んでるのかね」
主人は尋ねましたが、女は答えません。

その次の日も、そのまた次の日も、女は飴を買いに来ました。
そして7日目の晩、やはり女がやって来て、
「飴を買いたいのだけれど、もうお金がありません。この羽織をお金の代わりに受け取ってくださいな」
さすがになんだか女が気の毒に思えてきた主人は、羽織を受け取って飴を売ってあげました。

金平糖

翌日のことです。
女が置いて行った羽織を、飴屋の主人が店先に干していました。そこへたまたま通りかかった年を取った旦那が羽織に気付いて、主人に声を掛けました。

「その羽織を、どこで手に入れたんだね」
主人が事情を話すと、旦那はびっくりした顔で、
「娘が先日死んだのだが、そのとき棺桶に一緒に入れた羽織と、この羽織が全く同じなのじゃよ」
と答えたので、今度は主人がびっくり。

旦那は大急ぎで娘の墓に足を運びました。するとまだ新しい娘の墓の土の下から、赤ん坊の泣き声がするではありませんか。旦那は急いで墓を掘り起こしました。墓の中で、亡くなった娘が元気に泣く赤ん坊を、大事そうに抱き抱えていました。

そして棺桶に入れてあった三途の川を渡るお駄賃の六文の銭はなくなっており、その代わりに赤ん坊の手には、飴屋の飴がありました。

旦那は赤ん坊を抱き上げ、娘の亡骸に向かって、
「赤ん坊のために、よくぞ飴を買いに行ったものだ。この子は大事に育てるから安心していいぞ」
そう言い終わると、娘がこくりと頷いたように旦那には見えたのだそうです。

この赤ん坊は、のちに寺に引き取られて育ち、立派な坊さんになったのだそうな。

むかしむかし、ある「あめや」のしゅじんが よるになったので、みせを しめようとしていました。
そこへひとりの女がやって来ました。女のかみは ボサボサとしていて、かおは青白く、きえるかのような小さなこえで
「すみません。『あめ』をひとつくださいな」
そう言って、ぜにを1もん さし出しました。

女のようすがなんだか ぶきみだったので、しゅじんは ことわろうとしました。しかし何ども たのむものですから、こんまけしてしまいます。しゅじんは「あめ」をひとつ うりました。

つぎのばん、また同じ時間に女がやって来て、
「すみません。『あめ』をひとつくださいな」
と言って1もん さし出しました。
しゅじんは「あめ」をひとつ うりました。
「どこにすんでるのかね」
しゅじんはたずねましたが、女はこたえません。

そのつぎの日も、そのまたつぎの日も、女は「あめ」をかいに来ました。
そして7日目のばん、やはり女がやって来て、
「『あめ』をかいたいのだけれど、もうお金がありません。この『はおり』をお金のかわりに うけとってくださいな」
さすがになんだか女が 気のどくに思えてきたしゅじんは、「はおり」をうけとって「あめ」をうってあげました。

金平糖

よくじつのことです。
女がおいて行った「はおり」を、「あめや」のしゅじんが みせさきにほしていました。そこへたまたま通りかかった年を取った だんなが「はおり」に気づいて、しゅじんに こえをかけました。

「その『はおり』を、どこで手に入れたんだね」
しゅじんがじじょうを話すと、だんなはびっくりしたかおで、
「むすめが先日しんだのだが、そのときかんおけに いっしょに入れた『はおり』と、この『はおり』がまったく同じなのじゃよ」
とこたえたので、こんどはしゅじんがびっくり。

だんなは大いそぎで むすめのはかに足をはこびました。するとまだ新しいむすめのはかの土の下から、赤んぼうのなきごえが するではありませんか。だんなは急いではかを ほりおこしました。はかの中で、なくなったむすめが げんきになく赤んぼうを、だいじそうに だきかかえていました。

そしてかんおけに入れてあった さんずの川をわたる おだちんの6もんのぜには なくなっており、そのかわりに赤んぼうの手には、「あめや」の「あめ」がありました。

だんなは赤んぼうを だき上げ、むすめのなきがらに向かって、
「赤んぼうのために、よくぞ『あめ』をかいに行ったものだ。この子はだいじにそだてるから あんしんしていいぞ」
そう言いおわると、むすめがこくりと うなずいたように だんなには見えたのだそうです。

この赤んぼうは、のちに寺に ひきとられてそだち、りっぱな ぼうさんになったのだそうな。

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 本興寺

本興寺

本興寺17代住職の日観(にっかん)聖人の出生の話が、この子育て幽霊の話だとされています


よみ ほんこうじ
住所 静岡県湖西市鷲津384
電話 053-576-0054
時間 9時~17時
定休 12/31、元旦
料金 大人300円、子供150円
その他  

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画像引用:wikipedia/Yanajin33様(http://ja.wikipedia.org/wiki/
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