【新潟県】恩を返した地蔵さま

恩を返した地蔵さま 新潟県新潟市
ふしぎ

一般向け かんじすくなめ こどもむけ

むかしむかし、越後の中野(なかの)という村では、大雨が降るたびに川の水があふれていました。田畑は水に浸かり、大切に育てて来た作物が流されることが、よくありました。

ある年のことです。またも大雨が降りました。川は今にもあふれそうなほどに、水が増えていました。
村人たちは、今年も田畑が被害に遭うのではなかろうかとハラハラ。ただただ心配して、川を見つめるしかありませんでした。

そうやって村人たちがしばらく川を見ていたところ、なんと濁流に流されている人の姿が見えました。
「誰かが流されている!」
村人たちは大騒ぎです。しかし今すぐにでも助けてやりたいものの、この激しい流れでは、どうしても尻込みしてしまいます。
それでも勇気を振り絞った男が数人、荒れ狂う水の中で舟を漕ぎ出し、助けに向かいました。

しばらく水と戦った男たちは、ようやく流され溺れていた人を舟に引き揚げることができました。ところがそれは人ではなく、お地蔵さまだったのです。
しかも岸にたどり着いたときに、お地蔵さまの首がポッキリと取れてしまったのでした。

「溺れておったのは、お地蔵さんじゃったか」
ともあれ村人は安心しました。お地蔵さんはとりあえず小屋の中に置いて、ひとまず皆、家に帰りました。

その夜、舟を出した村人の家に火の手が上がりました。火はどんどん大きくなり、消そうにも手に負えません。

炎

近所の人たちは為すすべもなく、ただ燃え上がる炎を眺めているしかなかったその時のことです。
どこからともなくひとりの大男が現れました。
「村の衆、下がっておれ。昼に助けてくれたお礼じゃ」
大男はそう叫ぶと、その手に持っていた桶でバシャッと水を火に振り撒きました。

なんということでしょう。継ぎ足さないのに絶えることなく、桶からどんどん水が出て来るのです。まるで滝のように炎に向かって水が降り注ぎ、手の出しようがなかった大火事の火が、あっという間に消えてしまいました。
村人たちは呆気に取られて、それを眺めていましたが、気が付いてみればその大男の姿がどこにもありません。
「あの人はどこの誰じゃったんじゃろう」
皆は首を捻りました。

次の朝、小屋に置いておいたお地蔵さんに、またも不思議なことが起きていました。
ポッキリと折れて取れていたはずのお地蔵さんの首が、なにごともなかったかのように繋がっていたのです。
おまけに小屋の中はなんだか焦げた匂いが漂っていて、しかも水浸しでした。そしてお地蔵さんの身体はすすだらけ。

「お地蔵さんが昨日の火事を消してくれたんじゃな」
そう悟った村人たちは、お地蔵さんに感謝しました。
これ以降、お地蔵さんは火消し地蔵と呼ばれ、大事にされたのだそうな。

むかしむかし、越後(えちご)の 中野(なかの)という村では、大雨がふるたびに 川の水が あふれていました。田畑は 水につかり、大切にそだててきた作物が ながされることが、よくありました。

ある年のことです。またも大雨が ふりました。川は今にも あふれそうなほどに、水がふえていました。
村人たちは、今年も田畑が ひがいにあうのでは なかろうかとハラハラ。ただただしんぱいして、川を見つめるしか ありませんでした。

そうやって村人たちが しばらく川を 見ていたところ、なんとだくりゅうに ながされている人の すがたが見えました。
「だれかが ながされている!」
村人たちは 大さわぎです。しかし今すぐにでも たすけてやりたいものの、このはげしいながれでは、どうしても しりごみしてしまいます。
それでもゆうきを ふりしぼった男が すうにん、あれくるう水の中で ふねをこぎ出し、たすけに向かいました。

しばらく水と たたかった男たちは、ようやくながされ おぼれていた人を ふねに ひきあげることができました。ところが それは人ではなく、おじぞうさまだったのです。
しかもきしに たどりついたときに、おじぞうさまのくびが ポッキリと 取れてしまったのでした。

「おぼれておったのは、おじぞうさんじゃったか」
ともあれ村人は あんしんしました。おじぞうさんは とりあえず「こや」の中において、ひとまずみな、家にかえりました。

そのよる、ふねを出した 村人の家に 火の手が上がりました。火はどんどん 大きくなり、けそうにも 手におえません。

炎

きんじょの人たちは なすすべもなく、ただもえ上がるほのおを ながめているしかなかった そのときのことです。
どこからともなく ひとりの大男が あらわれました。
「村のしゅう、下がっておれ。ひるにたすけてくれた おれいじゃ」
大男は そうさけぶと、その手にもっていた「おけ」で バシャッと水を 火にふりまきました。

なんということでしょう。つぎ足さないのに たえることなく、「おけ」から どんどん水が 出てくるのです。まるでたきのように ほのおに向かって 水がふりそそぎ、手の出しようがなかった 大かじの火が、あっというまに きえてしまいました。
村人たちは あっけにとられて、それをながめていましたが、気がついてみれば その大男のすがたが どこにもありません。
「あの人は どこのだれじゃったんじゃろう」
みなは くびをひねりました。

つぎのあさ、「こや」においておいた おじぞうさんに、またもふしぎなことが おきていました。
ポッキリとおれて とれていたはずの おじぞうさんのくびが、なにごともなかったかのように つながっていたのです。
おまけに「こや」の中は なんだかこげたにおいが ただよっていて、しかも水びたしでした。そしておじぞうさんの 体はすすだらけ。

「おじぞうさんが きのうのかじを けしてくれたんじゃな」
そうさとった 村人たちは、おじぞうさんに かんしゃしました。
これいこう、おじぞうさんは 「火けしじぞう」とよばれ、だいじにされたのだそうな。


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